「佐渡島の金山」は、「相川鶴子金銀山」と「西三川砂金山」の2つの鉱山遺跡で構成。新潟県などは「江戸時代にヨーロッパとは異なる伝統的手工業で大規模な金生産システムを発展させた、世界的にもまれな鉱山だ」として、世界文化遺産の登録を目指している。
佐渡金山には戦時中、労働力不足を補うため、少なくとも1000人を超える朝鮮半島出身労働者が動員されたとされる。このため、韓国は旧朝鮮半島出身労働者が強制的に労働を強いられていたと主張しており、こうした歴史的背景から「佐渡島の金山」が世界遺産登録を目指すことに反対している。韓国政府は「佐渡島の金山」の世界文化遺産登録を目指す日本の動きに対応するため、官民合同のタスクフォース(作業部会)も立ち上げた。
また、韓国は2015年に世界文化遺産に登録された「明治日本の産業革命遺産」についても、登録時、強い反発を見せた。「明治日本の産業革命遺産」に含まれている長崎市の端島炭坑(軍艦島)には、朝鮮半島出身労働者が多数働いていた。このことから韓国側は、世界遺産登録の際、日本側に朝鮮半島出身者の当時の状況が理解できるような説明を講じるよう要請。日本はこれに応じる形で2020年、東京に「産業遺産情報センター」を開設した。しかし、韓国側は「(センターの)展示は強制労働させられた朝鮮半島出身者の被害が明確に説明されておらず、登録時の約束が守られていない」などと批判を強めた。
これを受けユネスコは、戦時徴用された朝鮮半島出身者に関する日本政府の説明は不十分だとする決議案を採択。ユネスコの世界遺産委員会は日本側にセンターの展示を念頭に改善を求め、進捗(しんちょく)状況を報告するよう求めた。日本政府は、これに応じる形で先月までにユネスコ世界遺産委員会に保全状況報告書を提出した。
韓国側は「明治日本の産業革命遺産」に関する問題が解決されていない中で、同じく朝鮮半島出身労働者が働いた歴史がある佐渡金山が世界遺産登録を目指すことを問題視してきた。
しかし、日本政府は昨年2月、「佐渡島の金山」について世界文化遺産候補としてユネスコに推薦することを正式決定した。今年の登録に期待が高まったが、ユネスコは提出された推薦書の不備を指摘。政府は昨年7月、目標としていた2023年の登録実現は難しくなったと発表した。ユネスコが問題視したのは「西三川砂金山」の導水路跡に関する説明部分で、日本政府は昨年9月、指摘された部分を修正した暫定版の推薦書を提出。ユネスコと文書の内容を調整するなど、推薦書の再提出に向けて準備を進めてきた。
19日(日本時間)にユネスコの世界遺産事務局に推薦書を提出したことを明らかにした永岡文科相は。「佐渡島の金山の文化遺産としての素晴らしい価値が評価されるよう、引き続き新潟県や佐渡市、また関係省庁と連携しながら、世界遺産への登録実現に向けて全力で取り組んでいく」と述べた。
一方、韓国政府傘下の「日帝強制動員被害者支援財団」は20日、推薦書の再提出に強く反対し、速やかな撤回を求める声明書を提出した。同財団は日本が近代以降の強制労働を含む全体の歴史について言及しないまま「佐渡島の金山」を世界遺産に登録することは不当だと批判した。
また、韓国外交部は在韓日本大使館の浪岡大介公使を呼んで抗議した。報道官論評も発表し、「強制労働の痛みを含む歴史が遺産登録に反映されるよう、ユネスコなど国際社会と共に努力を続ける」と強調した。「明治日本の産業革命遺産」についても言及し、世界文化遺産登録後も歴史を説明する日本政府の措置が「忠実に履行されていない」と改めて批判した。
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