キム氏らは2019年から昨年2月にかけて、変色した白菜とカビが生えた大根を使って作ったキムチ約24万キログラムを販売した罪などに問われている。
昨年2月、韓国の放送局MBCの報道によって問題が明るみに出た。番組ではハンソン食品の子会社ヒョウォンが運営する中部のチュンチョンプクド(忠清北道)チンチョン(鎮川)のキムチ工場で、作業員が腐った白菜やカビが生えた大根の下処理をする様子を写した映像を放送した。映像は情報提供者が昨年10月から今年1月にかけて撮影したもので、「汚い」「私は絶対に食べない」などと話す作業員の声も入っていた。また、収穫した大根が入った箱には、肉眼でも確認できるほどカビが生えていたほか、完成品である包装キムチを補完する箱には幼虫の卵まで付着していたと伝えられた。「キムチ宗主国、韓国」を代表する食品会社の子会社の驚きの実態に、韓国では当時、衝撃が広がった。
問題が明るみになるや、親会社のハンソン食品にも批判が殺到。ホームページは一時、サーバーダウンする事態にまで発展した。ハンソン食品は、キム氏が1986年に設立した大手キムチ製造会社で、年間の売り上げは500億ウォン(約50億円)を超えるとされる。同社が製造したキムチは世界30か国に輸出されている。
報道を受け、キム氏は直ちに謝罪文を発表。「報道された子会社ヒョウォンのキムチ製造における衛生問題に関して、消費者の皆様にご心配をおかけして申し訳ない」と陳謝。「今回の事態を重く受け止め、再び生まれ変わることができるように全社員とともに努力を尽くしていく」とした。
その後、食品医薬品安全処が捜査に着手し、昨年10月、キム氏らは送検された。
キム氏は国から2007年に「食品名人」の称号を、2012年には「大韓民国名匠」の称号を受けている。騒動後、キム氏が「名匠」の資格を返上するか否かをめぐって当時、二転三転したことも波紋を広げた。キム氏は当初「名匠」の資格を返上すると宣言するも、その後撤回。そして最終的には返上を余儀なくされるという事態となった。キム氏は当時、「名人」の称号については自ら取り消しを申し出て返上。しかし「名匠」の返上のみを一時ためらったのはどんな理由があったのかと関心が集まった。
キム氏が「名匠」返上を撤回する意思を一時示した理由について、当時の韓国紙・朝鮮日報は「業界関係者は、名匠に与えられる『継続従事奨励金』が関係しているのではないかとみている」と伝えた。名匠に認定されると一時奨励金2000万ウォン(約210万円)が支給され、その後も同じ職種に従事すると年間200~400万ウォンの継続従事奨励金が支給される。キム氏はこの恩恵が受けられなくなることから、名匠の返上を躊躇(ちゅうちょ)したのではないかとの見方が広がった。ちなみにキム氏が自ら取り消しを申し出た「名人」の資格にはこのような奨励金の支給制度はない。
韓国では一昨年3月、中国のキムチ工場で不衛生な製造現場をとらえた動画が拡散し、韓国人消費者の間で中国産キムチに対する不信感が一気に高まった。しかし、逆に韓国産キムチの品質の高さを海外に向けPRすることにもなった。
しかし、韓国の大手キムチ製造会社でも衛生管理面に著しい問題があったことが判明し、当時、韓国人消費者に衝撃と不安、落胆が広がった。
キム氏は問題が発覚するまで国から「食品名人」のお墨付きを与えられていたことからもわかるように、韓国を代表する料理研究家としてもその名が知られ、料理番組などにもしばしば出演していた。しかし、韓国メディアによると、検察は、キムチ製造をめぐるこの衛生問題の主犯の背後にキム氏がいたと判断し起訴した。
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