<W解説>韓国が「麻薬清浄国」から消費国に?事態を重く見た政府は総合対策を発表(画像提供:wowkorea)
<W解説>韓国が「麻薬清浄国」から消費国に?事態を重く見た政府は総合対策を発表(画像提供:wowkorea)
韓国における昨年の麻薬の摘発件数は771件に上り、計624キロ、額にして600億ウォン(約62億円)に上ることが分かった。かつて「麻薬清浄国」としていた韓国で、覚せい剤や大麻といった麻薬が急速に広がっている実態が改めて浮き彫りとなった。政府は麻薬撲滅のための総合対策を打ち出した。

ソウル・カンナム(江南)のある風俗店では昨年、20代の男女が薬物の入った酒を飲んで死亡する事件が発生。陸軍では、インターネットで大麻の種を注文した副士官が、部隊内で大麻を栽培していたとして摘発された事件も起きている。

麻薬犯罪はとりわけ若者の間で急増している。韓国における昨年上半期の麻薬犯罪での摘発者のうち、10代は292人、20代は2717人で全体の35.1%を占めた。韓国警察庁は「好奇心による服用を超え、流通にも加担している」と指摘している。先月にはメッセージアプリ、テレグラムの麻薬販売チャンネルを通じて青少年に麻薬を販売したなどとして、未成年を含む23人が検挙された。このうち14人は購入・服用の疑い、残りの9人は販売した疑いが持たれている。

昨年7月には国際刑事警察機構(インターポール)によって国際指名手配されていた「東南アジア3大麻薬王」の1人である韓国人の男が、ベトナムのホーチミン市で逮捕された。男は2018年から東南アジアを中心に麻薬取引を行い、男が率いるルートは東南アジア最大規模の麻薬密売ルートの1つだったという。

「セレブ子息」の麻薬スキャンダルも相次いでいる。ソウル中央地検は昨年、財閥の「ナムヤン(南陽)乳業」と「ヒョソン(暁星)グループ」の創業者の孫ら9人を、麻薬類管理に関する法律違反(大麻)の罪で起訴した。南陽乳業の創業者の40代の孫は昨年10月、大麻を流通、所持、使用した疑いで逮捕・起訴された。また、暁星グループの創業者の30代の孫は、昨年1~11月にかけて4回にわたり大麻を購入、使用したとして在宅起訴された。検察はこれら被告の大半が海外留学時に大麻に接し、帰国後も使用を続けたものと見ている。

また、昨年12月、鉄鋼メーカーの「コリョ(高麗)製鋼」の創業者の孫で、系列会社の常務が麻薬類管理法違反の疑いで逮捕された。前述した、南陽乳業と暁星グループの創業者の孫ら9人の薬物使用事件を捜査する過程で、常務が大麻を購入・使用した疑いがあることが判明したという。

麻薬を取引する手段としてインターネットやSNSが使われるケースも増えてきている。韓国の警察庁国家捜査本部が昨年8~12月の麻薬集中取り締まり期間中に検挙した5702人のうち、ネットやSNSが使われたケースは26.2%(1495人)で、前年同期比39,5%増加した。

一般的に、人口10万人あたりの麻薬犯罪者の数が年間20人以下の場合、麻薬に対してクリーンな国とされる。この基準にのっとり、韓国はかつて自国を「麻薬清浄国」と呼んでいた。韓国紙の中央日報は昨年10月、社説で「韓国は誰でもその気になれば簡単に麻薬を手に入れることができる国になりつつある」と指摘。「麻薬がひとたび毒キノコのように広がれば、『麻薬との闘い』を宣言したところで効果はないという事実は各国の例が物語っている」とし、検察と警察が総体的な能力を発揮できるよう、捜査権を含めた全般的な対応体系の見直しを訴えた。

こうした事態を重く見た韓国政府は総合対策を発表。関税庁のユン・テシク(尹泰植)庁長は「韓国は8年前に麻薬清浄国の地位を失い、今や消費国となっている」と危機感をあらわにし、「今年を麻薬との闘いの元年とする」と宣言した。

対策の内容としては、主な税関に麻薬担当組織を設け、広域捜査システムを構築するほか、オンラインで行われる麻薬取引の取り締まりを強化するために担当要員を3倍に増やす。また、麻薬摘発のための高性能な設備45台を追加で導入するほか、麻薬の取引に関して通報した人への報奨金も最大で3億ウォンに引き上げる方針。さらに、海外の関税当局との合同の取り締まりを拡大し、捜査方法の高度化を図る。

韓国はかつてのような「麻薬清浄国」に戻ることができるのか。

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