<W解説>ペットブームに沸く韓国、真の「ペット共生社会」を作るために必要なこと(画像提供:wowkorea)
<W解説>ペットブームに沸く韓国、真の「ペット共生社会」を作るために必要なこと(画像提供:wowkorea)
韓国の農林畜産食品部(部は省に相当)はペット犬の首輪リードの長さなどを定めた動物保護法施行令・規則改正案を、今月28日までに立法予告(日本のパブリックコメントに似た制度)する。同部は法案の内容と趣旨を国民に知らせて意見を求め、4月までに改正手続き完了を目指す。

改正案では2か月以上ペットを飼う飼い主は、ペット同伴での外出の際、移動装置(カバン)などを使用する場合、脱走が不可能なようにロック装置を備えなければならないと定めている。また、集合住宅や共同住宅の建物内部の共用部分で取られてきた「動物を抱く」「リードを持つ」などの安全措置を、オフィステルや老人福祉住宅など準住宅内部の共用空間にも適用した。

また、ペットの飼育や管理、保護の義務強化のため、ペットをリードでつなぐ際、長さを2メートル以上と規定した。その他、飼育場所が飼い主などが居住する所から離れている場合、飼育している動物の衛生・健康状態を定期的に観察するよう定めている。

こうした細かい規定を盛り込んだのは、ペットの飼育率が高まっている中、ペット動物との共生社会の構築に向けた基盤を今まで以上に整備する必要があるからだ。

韓国ではペットの飼育率が高まっており、KB金融持株経営研究所によると、2020年末時点で604万世帯(全世帯の29.7%)1448万人がペットを飼っている。2017年末の502万世帯からわずか3年で20%以上増加している。2020年末時点で飼育しているペットを種類別にみると、犬が80.7%、猫が25.7%で、観賞魚、ハムスター、鳥、ウサギと続いた。

飼育率の高まりとともにペット関連市場・産業も急成長しており、ペットとエコノミーを掛け合わせた造語「ペッコノミー」という言葉も定着しつつある。韓国農村経済研究院の報告書では、2015年に1兆8994億ウォン(約1936億円)だったペット関連産業の市場規模は、2027年には6兆ウォン(約6200億円)を超えるまでに成長すると予測している。

韓国も日本同様、ペットを飼おうとする場合、ペットショップで購入することが一般的だ。日本に比べ安価な価格が設定されており、誰でも気軽に購入しやすい環境が整っている。

それ故に、安易にペットを飼い始め、育てられずに放置したりするケースも増えてきている。農林畜産食品部がこのほど発表した動物保護に関する国民調査の結果によると、飼い主の22%が飼育放棄や手放すことを考えたことがあると答えた。

また、動物への虐待も問題になっている。2019年1月には、購入した子犬が排泄物を食べてしまうので返品したいとペットショップを訪れた飼い主の女性が店側に断られて逆上し、キャリーケースから子犬をつかみ出して店員に投げつけるという事案が発生、犬は頭を強く打って死んだ。女性が返品したいと店を訪れたのはこの子犬を購入してからわずか6時間後のことだった。当時、女性の行為は批判を浴び、ネット上では「動物にも感情があり、痛みを感じるのがわからないのか」「排泄物を食べようとするのはストレスを抱えている時に見られる行動なのに」などといったコメントが上がった。

農林畜産食品部は2020年1月、動物を虐待する行為について処罰を強化する方針を示した「動物福祉総合計画」を公表。2021年から動物虐待や動物遺棄に関して厳罰化することとし、虐待によって動物を死に至らしめる行為には3年以下の懲役または3000万ウォン(約311万円)以下の罰金に処すると定めた。動物遺棄に関しては300万ウォン(約31万円)以下の罰金を科すとした。動物虐待罪が成立すると、動物の所有権が制限される。また、2020年から飼い主の責任意識を高めるため、ペットを購入する際に所定の教育を受けることを義務付けている。

かつて韓国ではペットを「愛玩動物」と表現されてきたが、近年では「伴侶動物」の表現が一般的になっている。動物が「かわいい」という理由だけで安易に飼うことは許されない。飼い主は一度飼い始めたら「伴侶」として最後まで面倒を見る責任があることは言うまでもない。真のペット共生社会を目指すため、飼い主の意識も社会の制度基盤もさらなる変革が求められている。

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