汚染水の海洋放出に伴うトリチウムの濃度はこれまでの国内海域の10万分の1のレベルに過ぎないほど微々たるものだとしているが、汚染水が韓国の環境に及ぼす影響については依然として多くの専門家が懸念を示している。放出される放射性物質が生物の食物連鎖を通して全世界の生態系に影響を及ぼしかねないとの指摘も出ている。
韓国海洋科学技術院(KIOST)と韓国原子力研究院(KAERI)は16日、韓国防災学会の主催で開かれた学術発表大会でこのような内容を盛り込んだ「共同トリチウム拡散シミュレーション」の結果を発表した。
研究陣によると、韓国の管轄海域に流入するトリチウムは、2年後に0.0001㏃/立方メートルの濃度で一時的に流入し、4年から5年後に本格的な流入が始まる。10年後には約0.001㏃/立方メートル前後に到達すると予測している。0.001㏃/立方メートルは海洋に存在するトリチウム濃度の10万分の1レベルで、分析機器では検出が難しい濃度だ。韓国海域の平均トリチウム濃度(172㏃/立方メートル)と比較すると580万分の1を超えるが、あまりにも微細な差であり区分することが無意味だ。
トリチウムは多核種除去設備(ALPS)では除去できない放射性物質で、人体内の正常な水素を押し出してその場を占めると遺伝子が変形するなど人体に損傷を与える恐れがある。日本政府はALPSを利用して62個の核種を基準値以下に処理し、ろ過されないトリチウムは海水と希釈して放出しても問題がないと主張してきた。
学界では、韓国の海域に入って来るトリチウムの濃度が問題となるレベルではないという立場だ。KAISTの原子力および量子工学科のチョン・ヨンフン教授は「放流地点での濃度がすでに飲用しても問題がないレベルで、1日に2リットルずつ1年間飲んでも問題となる被ばく量が生じないレベル」とし、「ALPSで(放射性物質を)一つもろ過できないと仮定した場合でも、タンクにある水の2倍の量を放流したとしても、韓国の海域には全く影響がなく、危険性を論じる問題ではない」と述べた。
しかし、汚染水の流入による国内環境への影響が少ないとは言えない。グリーンピースのジャン・マリー氏は「ALPSがトリチウムを除いた他の物質まできちんと処理しているのか疑問が残る」として「これまで放射性核種を正しく処理してきたという科学的根拠も全くない」と指摘した。今回の研究ではトリチウムを除いた他の放射能核種に対する分析はなされていないが、ALPSがトリチウムだけを処理できないという仮定自体に問題があるという意味だ。
「生態系の『食物連鎖』が根本的な問題…日本側のデータも検証すべき」
海底に沈んだ放射性物質がヒラメなどに蓄積され、食物連鎖を通じて海洋の生態系全体を破壊する恐れがあるという指摘も出ている。今回の研究では放射性核種が海洋の生態系に蓄積される問題に対する分析は行われていない。ソウル大学原子核工学科のソ・ギュンニョル教授は、「(汚染水が)福島沿岸から太平洋まで流れ出た時、さまざまな放射性物質が海底に沈み、そこに生息する魚類に致命的な影響を与える恐れがある」と語った。
東京電力が福島第一原子力発電所の汚染水の測定および評価対象核種をこれまでの64種から半分程度に減らしたことに対しても懸念の声が出ている。共に民主党のイ・ジェジョン議員室が原子力安全委員会から受け取った資料によると、東京電力は現在測定している放射性核種64種のうち、放射性ストロンチウムなど37種を除いて計4種を新たに含め、31種の物質の濃度のみを測定すると明らかにした。
日本側は除外された核種の場合半減期が12年程度と短く、汚染水には混入していないとしている。これに対してソ教授は「原子炉は溶け出た燃料が少量の水に触れると核分裂を起こして放射性物質が出る」と述べ、「半減期が過ぎても放射性物質の生成が現在も行われている可能性がある。少なくとも半減期の10倍以上の時間が立たなければならない」と主張した。
専門家らは、日本の海洋放出に関する情報を透明性をもって公開し、国民の懸念を取り除くべきだと強調している。チョン教授は「日本が放出を行うとするその量だけが流出するのなら全く問題はないが、放出すると言った(計画が)正しく行われているかをともに点検する権利を主張することができる」とし、「今まで公開された情報と今後の放出に関するデータが合致するのかについての検証を要請しなければならない」と言及した。
海洋水産部に対しては、水産業に及ぼす否定的な影響を考慮した支援策が必要だと指摘した。ソ教授は「2013年に(原発の汚染水が一部流出した時に)水産物の消費が急減したのは結局心理的な問題」と述べ、「漁業関係者への被害が大きいため、生計補助のための支援策作りが必要だ」と語った。
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