ソウル中央地検は、特別経済犯罪加重処罰法上の背任、利害衝突(利益相反)防止法違反、腐敗防止法違反、特別経済犯罪加重処罰法上の贈賄罪、犯罪収益隠匿(いんとく)規正法違反の容疑で李氏の逮捕状を請求した。
検察は、李氏がソウル近郊の城南市長在任中の2014年から、同市テジャンドン(大庄洞)地区の都市開発で特定の民間業者を優遇し、都市開発公社に4895ウォン(約501億円)の損失を与えたとみている。
また李氏は同市の市長だった2016~18年、NAVER(ネイバー)や斗山建設などの企業からプロサッカークラブの城南FCに対する寄付金約170億ウォン(約18億円)を集め、見返りにこれら企業に建築の許認可や土地の用途変更などで便宜を供与した第三者供贈の疑いもあり、今回、複数の容疑が逮捕状の請求理由に盛り込まれた。
検察は1月以降、李氏を3回出頭させ、取り調べを行ってきた。李氏は一連の捜査に、検察出身のユン・ソギョル(尹錫悦)大統領が、「政敵排除のために国家権力を私有化した」と批判してきた。一方、大統領室の関係者は先月、李氏が尹政権を「検察独裁政権」と批判していることに関し、「コメントすることはない」と話し、李氏に関する検察の捜査に大統領室は無関係との立場を暗に示した。李氏は今月10日に検察に出頭した際、「検察が政権の手先となってありもしない事件をでっち上げている」と改めて容疑を全面的に否認した。
李氏は慶尚北道・安東郡(現・安東市)生まれの58歳。貧しい家庭に育ち、小学校卒業後は少年工として働きながら検定考試に合格、中学・高校の卒業資格を得た。1986年に韓国の中央大学を卒業し、弁護士となった。
その後、2010年に城南市の市長に就任。17年の大統領選では、「共に民主党」の公認候補を選ぶ党内予備選挙に立候補したが、ムン・ジェイン(文在寅)前大統領に敗れた。18年から一昨年10月まで京畿道知事を務めた。過激な言動がトランプ前米大統領に似ていることから、メディアはしばしば李氏について「韓国のトランプ」と表現してきた。対日強硬派としても知られる。昨年3月の大統領選に立候補し、最後まで尹氏と激しい争いを見せたが、約24万票の僅差で敗れた。それまで国会議員の経験はなかったが、昨年6月の補欠選で当選し、晴れて議員バッジを着けることになった。そして、7月、最大野党「共に民主党」の党代表選に立候補を表明。同党の歴代最高となる77.77%の支持を得て他の候補を圧倒し、勝利。党代表となった。
検察はこれまでの捜査の結果、事案は重大で、重罰は避けられないと判断。逃亡と証拠隠滅の恐れがあるとして李氏の逮捕状を請求した。これに、李氏は「史上最大規模の捜査に100回を超える家宅捜索、数百人の関係者調査を終えたのに、(私が)隠ぺいする証拠が残っているのか」と指摘。「逮捕の要件は全く(満たして)ない」と述べた。その上で、「国家権力を政敵の除去に悪用した検事独裁政権は必ず国民と歴史の審判を受ける」とし、「検事独裁政権の憲政秩序崩壊に毅然(きぜん)と立ち向かう」と強調した。
国会議員の李氏には「国会会期中に国会の同意なしに逮捕されない」という不逮捕特権がある。今後、法務部(法務省に相当)などを経て逮捕同意の要求書が提出され、国会での同意案の採決が行われることになるが、李氏が党代表を務める「共に民主党」が議席の過半数を占めており、韓国の通信社、聯合ニュースは「逮捕同意案が可決される可能性は低い」と報じている。
しかし、来年4月には総選挙が予定されており、「共に民主党」内で李氏の求心力は低下すれば、党代表の座を追われるのみならず、政治生命の危機を迎える可能性もある。
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