<W解説>元日以来、今年2回目のミサイル発射を強行した北朝鮮、狙いは?(画像提供:wowkorea)
<W解説>元日以来、今年2回目のミサイル発射を強行した北朝鮮、狙いは?(画像提供:wowkorea)
北朝鮮は18日午後5時22分ごろ、首都・ピョンヤン(平壌)のスナン(順安)から朝鮮半島東の日本海に向けて弾道ミサイル1発を発射した。ミサイルはおよそ66分間飛び、午後6時27分ごろに日本の排他的経済水域(EEZ)内の北海道・渡島大島の西方約200キロの日本海に落下したとみられる。北朝鮮による弾道ミサイル発射は1月1日の「超大型放射砲」以来で、今年に入って2回目。日米韓当局は対応に追われた。

今回発射されたミサイルについて、韓国軍と情報当局は新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星17」の可能性が高いとみている。最高高度は約5700キロ、飛行距離は約900キロと推定される。高度を高める「高角発射方式」で実施された発射されたとみられるという。飛行した軌道に基づいて計算すると、弾頭の重量などによっては射程距離は1万4000キロを超え、米国全土が射程に含まれる可能性がある。北朝鮮は昨年11月に2回、「火星17」とみられるミサイルの発射実験を実施した。このうち2回目の発射については、事実上、成功したとの評価を下している。

韓国軍の合同参謀本部は、発射直後に米軍と状況を共有。北朝鮮のいかなる脅威と挑発にも合同防衛態勢を一層強固にすることを確認した。韓国大統領室は、キム・ソンハン国家安保室長主宰の国家安全保障会議(NSC)常任委員会を開き、弾道ミサイルの詳細や挑発の意味などを分析し、対応策を協議した。大統領室は報道資料を通じ、「北の長距離弾道ミサイル発射は国連安全保障理事会の決議違反であり、朝鮮半島と域内の緊張を高める深刻な挑発であることを強調し、これを強く批判した」と伝えた。その上で、北朝鮮内で食糧難が深刻になっている中、住民の人権と生活を顧みず、大規模な軍事パレードと核・ミサイル開発にだけ邁進していると指摘。挑発で北朝鮮が得られるのは国際社会の過酷な制裁のみと警告した。北朝鮮は今月8日夜、朝鮮人民軍の創設75年に合わせ、大規模な軍事パレードを実施した。パレードではICBMや戦術核兵器の運用部隊などが登場。核・ミサイル開発に一段と拍車をかける姿勢を示した。

大統領室が指摘するように、北朝鮮では現在、食糧難が深刻で、1990年代半ばの大飢饉以降、最悪な状況となっていると伝えられている。先月、韓国メディアが米国の北朝鮮専門メディア「38ノース」の報道を引用して伝えたところによると、北朝鮮の穀物の需要と供給量、食料価格などを基に分析した結果、穀物の在庫量が「最低必要量」以下に下がっていることが分かった。最低必要量は、食糧均等配分を前提に社会維持に不可欠な食糧の下限をいう。北朝鮮は、国連食糧農業機関(FAO)基準の最低必要量の80%水準と推定された。

北朝鮮では1900年代、大飢饉に見舞われた。住民は家財道具を売り払って食べ物に替えたりしたが、配給システムも崩壊したことで、約100万人以上が死亡したとされる。96年、朝鮮労働党は「苦難の行軍」とのスローガンを掲げ、飢饉と経済的苦境を乗り越えようと住民に呼びかけた。ここ最近の北朝鮮の食糧難はこの大飢饉以来、最も深刻な状況となっているという。

一方、北朝鮮が昨年ミサイル発射にかけた費用は、約2600億ウォン(約270億円)にも上ると推計される。この費用は米50万トンを購入できる額に相当し、これは北朝鮮のすべての住民が46日分をまかなえる量だ。また、今年の食糧不足分(約80万トン)の60%以上を補うことができる規模という。

今回のミサイル発射について、韓国の聯合ニュースは「米韓への反発とみられる」と伝えた。米韓は3月に規模を拡大して合同軍事演習を実施する予定で、このことに対し北朝鮮外務省は17日、「われわれが侵略戦争準備とみなしている訓練構想を(米韓が)実行に移すなら、持続的で前例のない強力な対応に直面することになる」などとする報道官談話を発表していた。ミサイル発射には、米国への反発を示す狙いがあるとみられる。

また、韓国国防部は16日、2022年版の国防白書を公表し、隔年で発刊する同白書で6年ぶりに北朝鮮について「われわれの敵」と明記。対決姿勢を鮮明にしたことから、聯合は「北朝鮮がこれに反発した可能性もある」と報じている。

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