尹氏をめぐっては、管轄官庁に登録せず、団体の口座で計41億ウォン(約4億2500万円)の寄付金を集め、元慰安婦の葬儀費用などの名目で計1億7000万ウォンの寄付金を個人の口座で募ったほか、寄付金を私的に流用したとして、寄付金品法違反や業務上横領罪などで2020年9月に在宅起訴された。
これまでの裁判で尹氏は起訴内容を全面否認。法廷で「この30年間、活動家として恥じることなく生きてきたと考えている」、「あらゆる悪意あるメディアによる報道と根拠のない疑惑が続き、悪魔のような犯罪者に仕立て上げられた」などと主張してきた。検察は先月、「市民の募金を小遣いのように使い、罪は重い」として懲役5年を求刑。尹被告は最終弁論で「私益を追求する意図はなかった」と釈明した。
今月10日、判決公判がソウル西部地裁で開かれた。地裁は尹氏の私的流用を認め、「監督を受けずに個人口座に挺対協の資金を保管し、公私支出を明確に区分できないようにした」と指摘。流用で「市民の期待を裏切った」とし、「挺対協が韓国社会で持つ意味や影響力、被告の役割や地位を見れば、罪の責任は決して軽くない」とした。ただ、私的流用を目的として個人口座で寄付金を集めたとは言い難いとした上で、「30年間、慰安婦問題の解決や被害回復のために寄与した」との情状酌量も加え、罰金1500万ウォンの判決を言い渡した。しかし、詐欺罪など起訴内容の多くを無罪とした。
判決後、尹氏は「検察は1億ウォン以上を横領したとして起訴したが、裁判所は1700万ウォンほどを有罪とした。検察が無理に起訴した部分のほとんどが無罪となった」と検察の捜査を批判。その上で「釈明が不十分だった一部の金額についても横領の事実はなかったと繰り返し強調してきており、控訴審で誠実に立証する」とし、控訴する考えを明らかにした。
また、正義連はコメントを発表し、「市民団体に対する深い理解をもとに合理的な判断を下した裁判所に感謝する。検察の『叩けばホコリが出る』的な捜査と無理な起訴の問題点も明らかになった」とした。
尹氏は、疑惑が指摘される直前の2020年4月の総選挙で当選し国会議員となり、当時与党だった「共に民主党」(現・野党)所属議員として活動してきたが、不動産の取引や保有をめぐり違法行為の疑いが浮上し、2021年6月、党から除名処分を受け、以降、無所属議員として活動している。
国会議員は禁錮以上の刑が確定すれば失職すると規定されており、尹氏は寄付金流用事件で罰金刑にとどまったため議員職にとどまることになった。これを受け、かつて所属していた「共に民主党」の議員からは尹氏への謝罪の声が上がっている。
同党のイ・ジェミョン(李在明)代表はSNSに「私でさえ疑ったので、人生を丸ごと否定され、悪魔にされた彼女がどれほど悔しかったかと思うと申し訳ない」と投稿した。ウ・ウォンシク議員も自身のフェイスブックに「全生涯を否定される苦痛を経験した尹議員を深く慰める。党は今、尹議員を守るべきだ。魔女狩りのような検察の捜査がどれほど無理な捜査だったかが一審判決で明らかになったのはせめてもの救いだ」と投稿した。また、キム・ドゥグァン議員も「大多数の民主党議員が批判されることを恐れ、保守メディアの魔女狩りに沈黙していた時、恥ずかしいことに自分も例外ではなかった。最後まで守ることができず申し訳ない」と謝罪した。
しかし、横領の一部のみ有罪とし、残りの容疑は全て無罪と判断した今回の判決をめぐっては、ある現職判事からも「私企業と違って非営利法人は市民の寄付金や補助金を受け取るのであって、一層厳格な基準を適用して法的責任を問うべきだった」と批判の声が上がっている。検察も「被告の主張だけを一方的に受け入れたもので、納得できない」とし、判決文を精査した上で控訴する方針を示した。
朝鮮日報によると、「共に民主党」の一部議員からは、尹氏の復党を求める声も上がり始めているという。だが、公判は今後も続くとみられる中で尹氏を引き戻そうというのは、あまりに拙速ではないだろうか。
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