元徴用工訴訟をめぐっては、韓国の大法院(最高裁判所)が2018年10月、日本製鉄に対し、原告の元徴用工に対して賠償を命じた。同年11、12月には三菱重工業などに対し、勤労挺身隊に動員されて被害を受けたと主張する原告の韓国人への賠償を命じた。しかし、日本としては戦時中の賠償問題に関しては1965年の日韓請求権協定で解決済みとの立場で、被告の日本企業は履行を拒んだ。このため、原告は日本企業の韓国内資産に対する差し押さえを要求し、裁判所はこれを承認。日本製鉄の韓国内資産であるPNR(韓国の鉄鋼大手ポスコと日本製鉄の合弁会社)の株式や、三菱重工業が韓国に登録した商標権と特許権が押収された。現在、これら押収された日本企業の資産を、現金化(売却など)する手続きが進んでいる。
仮に現金化されれば日本政府は制裁措置を取る構えで、そうなれば日韓関係は破綻するとさえ言われている。そのため、現金化は絶対に避けなければならないという認識では日韓両政府とも一致している。
昨年5月、日韓関係改善に意欲を示すユン・ソギョル(尹錫悦)大統領が就任し、尹政権は問題解決に向けさまざまなアクションを起こしてきた。解決策を模索する中で、韓国政府は元徴用工らへの支援を行っている韓国の財団が被告の日本企業の賠償を肩代わりする案を有力な解決案とし、外交部が先月、この案を公表した。しかし、原告側は日本側の謝罪や資金拠出が必須だと主張。原告の支援団体などは野党との連携を強化し、政府との対決姿勢を鮮明にしている。
韓国政府はこの案を推進する一方、日本政府や被告企業による謝罪など、「誠意ある呼応」を求めており、現在、この点が両国の争点になっている。
18日の対面による日韓外相会談は、韓国政府が解決案を提示してから初めて開かれた。会談後、朴長官は「主要争点について言えることは全て言った。日本側に誠意ある呼応に向けた政治的決断を求めた」とし、「互いの立場は理解したので、双方の政治的決断だけが実用な状況だ」と話した。両外相は近く再び会談し、さらに協議を進める見通し。
今回の外相会談について韓国紙のハンギョレ新聞は「(両外相は)隔たりを埋めることはできなかった」と指摘。その上で、「両国は先月30日にソウルで開かれた韓日局長協議から、13日(現地時間)に米ワシントンで開かれた外務次官会談、そして同日の外相会談まで、高官級協議のレベルを上げて膝を突き合わせているが、依然として意見の相違は残っている。日本が『戦犯企業の賠償参加と謝罪』という要求を受け入れるか、韓国がこれを撤回しない限り、合意は不可能な状況だ」と解説した。
韓国の国会議員会館では16日、被告の日本企業に「賠償」履行を求める議員グループの設立集会が開かれた。グループには、最大野党「共に民主党」や無所属議員ら51人が名を連ね、国会で韓国政府案の撤回を求める決議案の採択を目指す方針を示した。
一方、韓国政府が示した解決案について、原告の一部からは容認する意見も広がりつつあるという。韓国の有力紙・中央日報は韓国政府案について「完ぺきではないが、韓国政府が努力してきた事実自体を非難したい考えはない」として支持する複数の原告遺族の意見を伝えた。また、日本テレビは原告の遺族を取材。「賠償はどんな形であれ、誰からであっても受け取る。(謝罪は)どんな言葉でも一言言っていただけるとありがたいが、してくれなくても私は仕方がないと思う」と話し、政府案を受け入れ、必ずしも日本側からの謝罪がなくとも、財団からの賠償を受け取る意向を示した。
外交部は今月28日に原告と遺族を集めて、改めて解決案を説明する場を設けることにしている。また、ハンギョレ新聞は「来月初めに予定された主要20か国・地域(G20)外相会議や、来月1日の独立運動記念日の大統領演説などは、交渉の局面転換の契機になり得るという見通しも示されている」と伝えた。
Copyrights(C)wowkorea.jp 3