<W解説>韓国の大学、新入生募集に苦慮=名門大でも入学辞退者が続出(画像提供:wowkorea)
<W解説>韓国の大学、新入生募集に苦慮=名門大でも入学辞退者が続出(画像提供:wowkorea)
韓国では日本より1か月早く、来月から学校の新学期が始まる。入学式が迫る中、韓国紙・東亜日報によると、韓国全土164の一般大学が20日、2次募集を開始した。募集定員に満たなかったためだ。同紙は「学齢人口の減少と医学部偏重現象で、各大学が新入生募集に困難をきたしているという分析が出ている」と伝えた。

 定員割れは地方大学で顕著で、定期募集で志願者が1人もいない学科もあった。ソウルにある有名大学も新入生の確保に苦慮しているという。ハニャン(漢陽)大学は28人(昨年は6人)の追加募集を実施。昨年、追加募集を行わなかった中央大学は14人、韓国外国語大学は24人の追加募集を決めた。そのほか、ホンイク(弘益)大や国民大、セジョン(世宗)大、トングク(東国)大などでも追加募集を発表した。いずれの大学も追加募集の人数が昨年よりも増えた。

 中には奨学金の支給などを打ち出して、新入生の獲得に奮闘している大学もある。韓国の公共放送KBSが伝えたところによると、南西部のクァンジュ(光州)のとある私立大学は、新入生全員にタブレッド端末などスマート機器の購入費用として60万ウォン(約6万2000円)を支給する。また、合格後、入学までに資格を取得したり、語学試験で高得点を取ればさらに現金が加算されるという。中部のテジョン(大田)にある私立大学は、随時募集の合格者全員を対象に、入学すれば奨学金の名目で100~150万ウォン(約10~15万円)を支給する、また、首都圏出身の学生は、1700人が入居できる寄宿舎に優先的に入れるという。南東部のキョンサンプクト(慶尚北道)のある大学は友人と一緒に入学すれば、学生1人当たり50万ウォン(約5万円)を支給する。外国人留学生も対象だという。この大学は留学生の誘致に力を入れており、大学関係者はアジア各国で入学説明会を開催するなど、PRに努めている。

 韓国紙のハンギョレ新聞は、韓国の大学の「半導体学科」で入学辞退者が続出していると報じた。半導体関連の学科に学生が集まらないことは、韓国の経済成長をけん引してきた半導体分野で国際競争力を落とすことにつながりかねないだけに、看過できない問題だ。

 韓国のある大手大学受験予備校の集計によると、ヨンセ(延世)大、コリョ(高麗)大、ソガン(西江)大、ハニャン(漢陽)大の4大学の半導体契約学科の追加募集で、計47人の募集人員に対して73人が追加合格していた。ハンギョレ新聞は「これは最初の47人の合格者全員が他の大学への入学などを理由に入学を辞退し、追加合格者のうち26人も入学登録をしなかったことを意味する」と指摘した。

 半導体契約学科とは、韓国政府が進める非メモリ(システム半導体)優秀人材教育制度の一つで、選抜試験の合格者は、在学期間中の学費無料や返済不要の奨学金の支給、入学時に就職先内定という特典が与えられる。半導体業界で、優秀な人材の獲得が難しくなっていることを受けて設けられた。企業が教育に参画し、指定した教科課程、現場プロジェクト実習などを経て専門性を積むことにより、卒業後直ちに競争力を発揮する人材を育てることができると期待されている。

 サムスン電子やSKハイニックスといった韓国を代表する企業への就職が保障されているにも関わらず、前述のように延世大や高麗大といった難関大学の半導体契約学科で追加合格者を出す事態となっている。

 ハンギョレ新聞は、同学科で入学辞退者が続出している要因について「医学・薬学系が好まれている影響だとする分析が出ている」と伝えた。大手予備校のチョンノ(鍾路)学院のイム・ソンホ代表は同紙の取材に「半導体契約学科は、医学・薬学系や上位大学と比較する中で押されている。(半導体関連の専門人材の育成を重視する)政府の政策意図とは異なる方向へと流れている」と指摘した。また、ある教育研究所の所長は「薬学部や歯学部、獣医学部、漢方医学部などにも合格した受験生たちが抜けたと考えられる。大企業に就職しても厳しい競争が求められ、職場が一生保障されるわけではないため、薬剤師や医師のようなより安定した職業が好まれる」と語った。

 半導体関連の学科にとどまらず、融合電子工学部や未来自動車工学科など政府が未来分野と位置付ける学科でも欠員が生じる事態となっている。前述のイ代表は「学齢人口の減少傾向を考慮すれば、今後、ソウルをはじめとする首都圏大学の新入生募集はさらに厳しさを増すだろう」と話した。特色ある大学づくりが急務だ。

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