<W解説>出生率が10年連続でOECD最下位となった韓国=抜本的対策を打ち出せず(画像提供:wowkorea)
<W解説>出生率が10年連続でOECD最下位となった韓国=抜本的対策を打ち出せず(画像提供:wowkorea)
韓国統計庁は、1人の女性が一生涯に産む子供の数の指標となる「合計特殊出生率」が昨年、0.78(暫定値)と過去最低だったと発表した。出生率が前年を下回るのはこれで7年連続となり、少子化に歯止めがかからない状況が続いている。昨年の出生数は24万9000人で前年比1万1500人、率にして4.4%減った。

韓国の出生率は1984年に1.74と初めて2を下回り、2000年代に入ると1.1~1.3を推移し、2018年には0.98と1を割り込んだ。経済協力開発機構(OECD)の加盟国の中で出生率が1を下回っているのは韓国だけ。2018年以降も歯止めがかからず、2020年には0.84、2021年は0.81、そして昨年、過去最低を更新して0.78となった。これは経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均(1.59人)の半分にも満たない。地域別では首都ソウルで0.59、第2の都市・プサン(釜山)で0.72と都市部で特に低かった。

一方、昨年1年間に死亡した人は37万2800人で、一昨年より5万5100人、率にして17.4%増え、過去最多となった。これにより、出生数から死亡数をひいた人口の自然増減は12万3800人の減少だった。韓国の人口は2020年以降、3年連続で自然減となっている。

統計庁は出生率低下の原因について、「婚姻数の減少が影響を及ぼした」と説明した。婚姻数は新型コロナウイルスが流行した2020、2021年に前年比で10%近い減少が続いた。2022年の婚姻数は前年比0.4%減の19万1000件と回復していない。

韓国では2000年代半ばに、恋愛、結婚、出産を諦める「3放」という言葉が生まれた。韓国には依然、子育ては母親が行うものという考えが残っており、結婚すれば子育てに家事と、負担を一挙に背負うことになるのではとの懸念から、結婚をためらう女性も少なくない。女性の社会進出が進み、これまで踏んできたキャリアステップが結婚を機にストップすることになるのではとの懸念を抱く女性もいる。また、ライフスタイルが多様化し、結婚をしなくても自分は好きなことをして暮らすことに快適さを抱く女性もおり、現代社会においてはそれも一つの価値観として存在するべき時代になっている。

超学歴社会、就職難の韓国において、激しい競争の末に格差は広がり、経済的不安から結婚や出産に踏み出せないケースも少なくない。韓国では不動産価格が高騰しており、若者からは「これだけ不動産が高いと結婚したらどうなるのか。いっそのこと結婚しないのも選択肢の一つだ」との声も上がる。韓国の不動産価格は過去5年間で平均8割上がった。KB国民銀行によると、ソウルのマンション価格は平均で12億4000万ウォン(約1億3000万円)。国土交通部(部は省に相当)によると、平均の住宅価格は所得の8.9倍と、日本や欧米諸国よりも高い。

韓国で少子化が大きな社会問題として浮上したのは2000年代初めからだ。2003年に発足したノ・ムヒョン(盧武鉉)政権から少子化対策に本腰を上げて取り組むようになった。政府は2006年から「低出産(少子化)・高齢化社会基本計画」を始動。2020年12月には、2021~2025年までの第4次計画を発表した。この計画には、2歳未満の子どもに対する幼児手当の支給や、出産一時金を支給することなどが盛り込まれている。こうした政府の支援策によって、子供が満8歳までに取得できる育児休業の取得者のうち、男性の比率は2021年に24%と、2015年の6%から大きく向上するなど成果も出てきている。しかし、若者が抱える将来への不安を払しょくし、前出の「3放」の価値観の転換につながるような抜本的な対策は打ち出せていないのが現状だ。

統計庁は、人口推計で、合計特殊出生率が2024年に0.70%まで下落すると見込んでいる。低い出生率は、経済の成長と活力を支える労働力の縮小にもつながることから、経済への長期リスクとなる。ユン・ソギョル(尹錫悦)政権も少子化は高齢化と並んで国の存続を左右する極めて重要な課題だと認識しており、対策の取りまとめを急ぐ考えだ。

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