韓国で3月1日は「三・一節」で、1949年に祝日である国慶日に制定され、8月15日の独立記念日の「クァンボクチョル(光復節)」、10月3日の建国記念日「ケチョンジョル(開天節)」と並ぶ韓国の3大祝日の一つとなっている。「三・一節」には韓国各地で記念式典や行事が開かれるが、新型コロナウイルスの流行を受けて、3年間にわたり中止や規模の縮小が続いてきた。しかし、今年は従来通りの規模で開催された。韓国の聯合ニュースによると、女性独立運動家、ユ・ガンスン(柳寛順)の記念館で開かれた記念式典には、国に人生を捧げた人たちや独立功労者の遺族、市民ら約1300人が出席した。中部のチョナン(天安)市にある独立記念館では、国民が選んだ名誉独立運動家1919人が参加した万歳運動の再現行事が開かれた。
柳寛順記念館で開かれた記念式典で演説した尹大統領は「複合的な危機や深刻な北の脅威など、安保危機を克服するための韓米日の協力がいつにも増して重要になった」とし、「普遍的な価値を共有する国々と連携、協力し、世界の繁栄に寄与しなければならない」と強調した。また、「祖国の自由と独立のために犠牲となり、献身した殉国烈士と愛国志士たちに敬意を表する」と称えた上で、「三・一運動は国民が主人の国、自由な民主国家を建立するための独立運動だった」とした。さらに尹大統領は「世界の変化に十分に備えず、国権を失い苦痛を受けた過去を振り返らなければならない」とし、「変化する世界史の流れを読むことができず、未来をしっかり準備しなければ過去の不幸が繰り返されることになることは明らかだ」と指摘した。
日本については「過去の軍国主義の侵略者から我々と普遍的な価値を共有し、安全保障や経済、そしてグローバルアジェンダで協力するパートナーに変わった」とした。
尹大統領が演説で、日本との未来志向の関係を強調したことについて、韓国の聯合ニュースは「高まる北朝鮮の核の脅威に対応するため、安全保障を含めて、日本と幅広い分野で協力するという意思を示したものとみられる」「自由民主主義、市場経済などを共有する日本との協力を強化することは、三・一運動の精神に込められた『自由な民主国家』と方向性を同じくするというメッセージと言える」と解説した。
演説で尹大統領は、日韓の勘案である徴用工訴訟問題については言及しなかった。尹政権はこの問題の解決案として、最高裁から賠償を命じられた日本企業に代わって、韓国政府の傘下にある既存の財団が原告への支払いを行う案を軸に日本と協議を続けている。外交部(外務省に相当)のパク・チン(朴振)長官は先月28日、訴訟の原告遺族と面会して政府の方針に理解を求めた。
尹大統領が演説で元徴用工訴訟問題や慰安婦問題に言及しなかった上、日本に対して謝罪や反省を要求していると捉えられるような言及もなかったことについて、聯合ニュースはムン・ジェイン(文在寅)前大統領による2018年の「三・一節」の演説と比較した上で、「(文氏が)『加害者』『反人倫的人権犯罪』」などの表現を用いて日本に反省を促したのとは対照的だ」と指摘した。
一方、最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)代表は「尹政権が三・一(独立)運動の精神を忘れている」と批判。「未来志向的な韓日関係を築こうとすることに反対する国民はいないが、歴史的責任と妥当な法的賠償のない信頼構築は不可能」と指摘した。さらに「尹政権が平和と国益をないがしろにしようとした時は全力でけん制する。それこそが厳しい苦難の中でも自主独立の熱望を失わなかった烈士の献身を称える道」とした。
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