<W解説>韓国・最大野党代表の逮捕同意案、否決するも賛成が反対を上回る波乱(画像提供:wowkorea)
<W解説>韓国・最大野党代表の逮捕同意案、否決するも賛成が反対を上回る波乱(画像提供:wowkorea)
背任の疑いなどで逮捕状が請求された韓国の最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)代表の逮捕同意案の採決が先月27日、韓国国会で行われた。同案は賛成票が出席議員の過半数に届かず否決された。しかし、賛成139人、反対138人で賛成票が上回る結果となった。同党所属の議員169人のうち少なくとも31人が李代表の逮捕に賛成、棄権、または無効票を投じたとみられ、同党議員からは「李代表への政治的不信任」との指摘も出ている。

李氏をめぐっては、ソウル近郊のソンナム(城南)市長在任中の2014年から、同市テジャンドン(大庄洞)地区の都市開発で特定の民間業者を優遇し、都市開発公社に4895ウォン(約501億円)の損失を与えた疑いが持たれている。また同市の市長だった2016~18年、NAVER(ネイバー)や斗山建設などの企業からプロサッカークラブの城南FCに対する寄付金約170億ウォン(約18億円)を集め、見返りにこれら企業に建築の許認可や土地の用途変更などで便宜を供与した第三者供贈の疑いもある。

検察は先月16日、特別経済犯罪加重処罰法上の背任、利害衝突(利益相反)防止法違反、腐敗防止法違反、特別経済犯罪加重処罰法上の贈賄罪、犯罪収益隠匿(いんとく)規正法違反の容疑で李氏の逮捕状を請求した。韓国野党第1党の党首への逮捕状請求は憲政史上初めてのことだった。一方、李氏は「検察が政権の手先となってありもしない事件をでっち上げている」などと容疑を全面否認した。検察は1月以降、李氏を3回出頭させ、取り調べを行ってきたが、これに関連して李氏は「史上最大規模の捜査に100回を超える家宅捜索、数百人の関係者調査を終えたのに、(私が)隠ぺいする証拠が残っているのか」と指摘。「逮捕の要件は全く(満たして)ない」と述べた。その上で、検事総長出身のユン・ソギョル(尹錫悦)大統領を意識し「国家権力を政敵の除去に悪用した検事独裁政権は必ず国民と歴史の審判を受ける」とし、「検事独裁政権の憲政秩序崩壊に毅然(きぜん)と立ち向かう」と尹政権への対決姿勢を示した。

李氏はキョンサンブクト(慶尚北道)アンドン(安東)郡(現・安東市)生まれの58歳。貧しい家庭に育ち、小学校卒業後は少年工として働きながら検定考試に合格、中学・高校の卒業資格を得た。1986年に韓国の中央大学を卒業し、弁護士となった。

その後、2010年に城南市の市長に就任。17年の大統領選では、「共に民主党」の公認候補を選ぶ党内予備選挙に立候補したが、ムン・ジェイン(文在寅)前大統領に敗れた。18年から一昨年10月まで京畿道知事を務めた。過激な言動がトランプ前米大統領に似ていることから、メディアはしばしば李氏について「韓国のトランプ」と表現してきた。対日強硬派としても知られる。昨年3月の大統領選に立候補し、最後まで尹氏と激しい争いを見せたが、約24万票の僅差で敗れた。それまで国会議員の経験はなかったが、昨年6月の補欠選で当選し、晴れて議員バッジを着けることになった。そして、7月、最大野党「共に民主党」の党代表選に立候補を表明。同党の歴代最高となる77.77%の支持を得て他の候補を圧倒し、勝利。党代表となった。

検察は李氏の逮捕状を請求したが、現職の国会議員である李氏は、国会会期中に国会の同意なしに逮捕・拘束されない不逮捕特権を持つ。そのため先月27日、李氏の逮捕同意案の採決が行われた。同意案の可決には、本会議に出席した297人の過半数の149票が必要で、採決の結果、賛成派139票と必要な票数に届かず、否決された。これにより、裁判所は李氏に対する逮捕状発付の是非を判断する令状審査が行えなくなった。

李氏は逮捕同意案の否決後、記者団に「検察の令状請求が極めて不当であることを民意の殿堂である国会で確認した」と述べた。しかし、賛成票が反対票を1票上回り、「圧倒的否決」に自信を見せていた「共に民主党」の予想を覆す結果となった。聯合ニュースは「反対票は同党の議席数(169議席)を大きく下回っており、賛成票や無効票を投じたり、棄権したりした『造反議員』が相当数いると分析される」と伝えた。

与党「国民の力」の議員からは「事実上、逮捕同意案が可決されたも同然だ。李代表に対する政治的死亡宣告が下された」との声が上がっている。今回の結果は、今後、「共に民主党」の党運営に影響が出ることが予想される。

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