<W解説>韓国・最大野党代表の逮捕同意案の採決で鮮明になった党内の亀裂(画像提供:wowkorea)
<W解説>韓国・最大野党代表の逮捕同意案の採決で鮮明になった党内の亀裂(画像提供:wowkorea)
背任の疑いなどで逮捕状が請求された韓国の最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)代表の逮捕同意案が先月27日、韓国国会で否決された中、同党内に造反議員が複数いることが分かり、「犯人捜し」の動きが活発になっている、と韓国紙の朝鮮日報が伝えた。党内では李代表と距離を置く「非李在明系」を中心に李氏の辞任論も上がり始めている

李氏をめぐっては、ソウル近郊のソンナム(城南)市長在任中の2014年から、同市テジャンドン(大庄洞)地区の都市開発で特定の民間業者を優遇し、都市開発公社に4895ウォン(約501億円)の損失を与えた疑いがもたれている。また同市の市長だった2016~18年、NAVER(ネイバー)やドゥサン(斗山)建設などの企業からプロサッカークラブの城南FCに対する寄付金約170億ウォン(約18億円)を集め、見返りにこれら企業に建築の許認可や土地の用途変更などで便宜を供与した第三者供贈の疑いもある。

検察は先月16日、特別経済犯罪加重処罰法上の背任、利害衝突(利益相反)防止法違反、腐敗防止法違反、特別経済犯罪加重処罰法上の贈賄罪、犯罪収益隠匿(いんとく)規正法違反の容疑で李氏の逮捕状を請求した。韓国野党第1党の党首への逮捕状請求は憲政史上初めてのことだった。一方、李氏は「検察が政権の手先となってありもしない事件をでっち上げている」などと容疑を全面否認した。検察は1月以降、李氏を3回出頭させ、取り調べを行ってきたが、これに関連して李氏は「史上最大規模の捜査に100回を超える家宅捜索、数百人の関係者調査を終えたのに、(私が)隠蔽(いんぺい)する証拠が残っているのか」と指摘。「逮捕の要件は全く(満たして)ない」と述べた。その上で、検事総長出身のユン・ソギョル(尹錫悦)大統領を意識し「国家権力を政敵の除去に悪用した検事独裁政権は必ず国民と歴史の審判を受ける」とし、「検事独裁政権の憲政秩序崩壊に毅然(きぜん)と立ち向かう」と尹政権への対決姿勢を示した。

李氏はキョンサンブクト(慶尚北道)アンドン(安東)郡(現・安東市)生まれの58歳。貧しい家庭に育ち、小学校卒業後は少年工として働きながら検定考試に合格、中学・高校の卒業資格を得た。1986年に韓国の中央大学を卒業し、弁護士となった。

その後、2010年に城南市の市長に就任。17年の大統領選では、「共に民主党」の公認候補を選ぶ党内予備選挙に立候補したが、ムン・ジェイン(文在寅)前大統領に敗れた。18年から一昨年10月まで京畿道知事を務めた。過激な言動がトランプ前米大統領に似ていることから、メディアはしばしば李氏について「韓国のトランプ」と表現してきた。対日強硬派としても知られる。昨年3月の大統領選に立候補し、最後まで尹氏と激しい争いを見せたが、約24万票の僅差で敗れた。それまで国会議員の経験はなかったが、昨年6月の補欠選で当選し、晴れて議員バッジを着けることになった。そして、7月、最大野党「共に民主党」の党代表選に立候補を表明。同党の歴代最高となる77.77%の支持を得て他の候補を圧倒し、勝利。党代表となった。

検察は李氏の逮捕状を請求したが、現職の国会議員である李氏は、国会会期中に国会の同意なしに逮捕・拘束されない不逮捕特権を持つ。そのため先月27日、李氏の逮捕同意案の採決が行われた。賛成139人、反対138人で賛成票が上回ったが、同意案の可決には、本会議に出席した297人の過半数の149票が必要で、過半数に届かず、否決された。これにより、裁判所は李氏に対する逮捕状発付の是非を判断する令状審査が行えなくなった。

しかし、同意案に、賛成票や無効票を投じたり、棄権したりした「造反議員」が少なくとも31人いることがわかり、党内では「犯人捜し」が始まった。朝鮮日報は「SNSでは李代表と距離を置く『非明系(非李在明系)』の議員およそ40人の名前や選挙区、電話番号などが書かれた『殺生簿』が拡散した。李代表の熱烈な支持者らがリストを作成し、流布しているものとみられる」と伝えた。また、ツイッターなどには「民主党の要注意議員リスト」などが出回っているという。

李氏に近い親明系(親李在明系)は、逮捕同意案の31票の「造反票」について「党代表闘争のための組織的離脱票」と規定し、「非明系」を批判している。

一方、東亜日報が伝えたところによると、非明系議員からは「今後、進退をどうすべきかは少し先に話すことだが、何らかの措置が必要なのは間違いないだろう」「李氏が起訴されれば、起訴時に党職停止を規定した党憲台80条をめぐって議論が起こるだろう」などといった声が上がっている。

一方、当の李氏は先月28日、記者会見で自身の進退を問う記者団の質問には答えず、「李在明を捕まえるのか捕まえないのか、こうした問題より、物価を抑え、経済を改善し、人々の生活を良くする問題に多くの関心を持ってほしい」と述べた。

だが、今回の逮捕同意案の採決を機に李氏の求心力が低下したことは否めず、党内も親李在明系と非在明系で大きな溝が生じる事態となっており、今後、党運営が停滞することも予想される。

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