2019年7月、当時の安倍晋三政権は韓国向け半導体素材3品目の輸出管理厳格化を発動し、同年8月、貿易上の優遇措置を適用する「グループA(旧ホワイト国)」から韓国を除外する政令改正を閣議決定した。元徴用工問題をめぐり、当時のムン・ジェイン(文在寅)政権が具体的な対応を示さないことへの事実上の対抗措置だったとの見方もあるが、日本政府は、安全保障上の観点から輸出管理を適切に実施するために行った措置で、これまで一貫して元徴用工問題とは無関係と説明している。当時、経済産業省は輸出の手続きを簡略化できる優遇措置の対象国から韓国を除外した理由について、貿易管理に関する審査などの体制が不十分なことや、問題解決に向けて情報を交換するための局長級の政策対話が、長期間開かれていないことなどを挙げた。
日本政府が輸出管理を厳格化した3品目はフッ化水素、フッ化ポリイミド、レジストで、いずれも韓国の主力産業である半導体の生産に不可欠でありながら、日本企業が世界的に大きなシェアを握っている。しかし、韓国は日本政府の規制措置を受け、これら半導体素材の国産化を進めようとした。その後、韓国メディアから「自前で生産できるようになった」「日本の依存度が低下した」などといった報道も出たが、一時は減少した日本からの関連輸入額が増加に転じるなど、国産化の動きは足踏み状態となっているとも指摘されている。
また、2019年9月に韓国は、日本の措置は不当としてWTOに提訴した。
日本政府が対韓輸出規制措置に踏み切った2019年8月当時、共同通信が行った日本全国電話世論調査では、政府の対応を「評価する」との回答は68.1%に上り、「評価しない」の20.1%を大きく上回った。当時、日本国内では大量破壊兵器に転用可能な戦略物資に対する韓国の輸出管理に疑問の声が上がっており、対韓輸出規制は妥当だと考える日本国民が多かった。一方、当時の調査では今後の日韓関係についても尋ねており、「懸念している」との回答は62.4%に上り、「懸念していない」の32.4%を上回った。
懸念通り、韓国では対韓輸出規制に抗議する目的で始まった日本製品の不買運動が次第に激化し、反日感情が高まった。不買運動は「ノージャパン運動」という名の下、「買わない、売らない、行かない」を合言葉に韓国全土で展開された。不買運動の影響で、コンビニなどでは日本メーカーの商品が一時、陳列棚から消えたほか、日本ブランドの店などは客足が遠のいた。
しかし、一連の不買運動は「選択的不買運動」とからかわれた。2020年、任天堂のゲーム機「ニンテンドースイッチ」の人気ソフト「あつまれ どうぶつの森」が韓国で大ヒット。発売日前日から大勢の人が販売店に並ぶ様子が見られた。また、不買運動を受けて日本からの投資や進出する企業が減ったことは韓国の雇用にも悪影響を与えることとなり、不買運動がブーメランのように韓国に跳ね返ってくる状況にもなった。
その後、コロナ禍を機に、なし崩し的に不買運動は下火になり、打撃を受けた日本の各製品の売り上げは回復に向かった。
輸出規制措置をめぐり、経済産業省は6日、「19年7月以前の状態に戻すべく、2国間の協議を速やかに行っていく」と説明した。韓国が日本による厳格化措置を受けて進めてきたWTOの紛争解決手続きを中断したことを踏まえ、協議再開の環境が整ったと判断した。
日本側はこれまで「韓国側の輸出管理体制に不備がある」と指摘してきており、今後、韓国側の輸出管理体制が改善しているかを見極める。具体的には輸出管理のための人員増強ができているかや、軍事転用可能な部品や素材を韓国が輸出する際の審査体制である「キャッチオール規制」を整えているかを確認。措置の解除の可否を判断することにしている。
Copyrights(C)wowkorea.jp 5