改編案では、週52時間勤務制(基本40時間、超過勤務最大12時間)の枠組みは維持しつつ、労使の合意によって超過勤務時間の管理単位を1か月、四半期、半期、年単位に広げられるように変更する。繁忙期には働く時間を増やし、閑散期は減らすといった柔軟な働き方が可能となる。週の労働時間が毎週変わる可能性があり、週の最大労働時間は、政府が保障する連続休息11時間と、休憩時間を引いた1日の最大労働時間11.5時間に週1日の休日を除く6日をかけた69時間となる。残業や休日勤務を多くすれば、手当の代わりに休暇として一度にまとめて消化することができるようにする計画。
韓国では2018年2月に、改正勤労基準法が成立し、同年7月1日から公共機関と従業員数300人以上の事業所を対象に「週52時間勤務制」を施行した。その後、2020年1月からは従業員数50人以上299人以下の事業所に、さらに、昨年1月からは従業員数5人以上49人以下の事業所に改正法が適用されることになった。違反した場合は2年以下の懲役または2000万ウォン(約200万円)以下の罰金が科せられる。
制度の施行により、2018年には1993時間だった韓国の労総者の年間平均労働時間は2021年には1915時間まで減少した。「夕日のある暮らし」をスローガンに、長時間労働の問題を解消することで労働者のワーク・ライフ・バランスを実現させることが制度の主たる目的だったため、一定の成果を上げた。しかし、雇い主は従業員に52時間以上は仕事をさせることができないため、特定の時期に仕事が集中する工場や、短時間で集中的な労働をして残りは長期間休息を取ろうとする労働者たちからは不満が出ていた。また、製造業などの現場では制度の実施により残業時間が減り、賃金総額が減少する問題が発生。大企業では労働組合が経営側と交渉し、賃金が減少した分をある程度補填(ほてん)してもらうことができたケースもあったが、多くの中小零細企業の労働者はこうした補填を受けられず、収入減となった。
ユン・ソギョル(尹錫悦)大統領は、昨年5月の就任以降、労働、教育、年金のいわゆる「3大改革」を国政の最重要課題と位置付けてきた。無理な労働時間の短縮よりは、柔軟な働き方を推進するとし、かねてから「週52時間勤務制」を見直す考えを示してきた。
政府は6日に開いた非常経済長官会議で「労働時間制度改編案」を決定した。繁忙期には週最大69時間の労働を認めるほか、長期休暇などを利用して労働者が十分に休息を取れるよう制度を見直す。
政府は改編案について「労働者の選択権(時間主権)、健康権、休息権を保障するもの」と説明。経営者側からは「古い法と制度を改善する労働改革の出発点」と歓迎するが、労働者側からは「労働権、健康権、休息権なき『三無の残業法』」と反発の声が上がっている。民間公益団体「職場パワハラ119」は「政府の主張通り『自律と選択』というのなら、労使が対等に労働時間を決められるようになっていなければならないが、韓国の労働者の86%は労働組合に加入できておらず、労働時間を決めるべき労働者代表は社長の弟や営業本部長だ」と指摘した。
一方、柔軟になった労働時間政策が、雇用主の意向により、特定の週、特定の仕事に集中し、長時間労働を助長しかねないとの批判に対し、雇用労働部は「延長労働の裁量管理は、労働者代表との間で書面合意を行うこととし、当事者間の合意の上で実施することで長時間労働を防止できる」としている。
「週52時間勤務制」により、前述のように制度後、韓国の労働者の年間平均労働時間は減少した。しかし、その時間はOECD(経済協力開発機構)加盟国中、2021年は5番目に長く、さらなる削減の必要性が依然として求められている状況にある。今回「週52時間勤務制」を見直した「労働時間制度改編案」によって労働環境はどう変化するのか注目される。
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