韓国外交部(外務省に相当)のパク・チン(朴振)長官は6日に記者会見し、徴用工訴訟問題に関して、韓国大法院(最高裁判所)判決で確定した被告の日本企業の賠償を韓国の財団が肩代わりする解決策を発表した。朴氏は経済や安全保障など、あらゆる分野で日韓協力が非常に重要だとして「長時間硬直した関係を放置せず、国益の観点から国民のために悪循環の輪を断ち切るべきだ」と述べた。その上で、日本に対し、「過去の不幸な歴史を克服し、和解と善隣友好協力に立脚した未来志向的関係を発展させていくため、共に努力することを望む」と述べた。
元徴用工訴訟をめぐっては、韓国大法院が2018年10月、雇用主だった三菱重工業と日本製鉄(旧新日鉄住金)に賠償を命じた。しかし、日本としては戦時中の賠償問題に関しては1965年の日韓請求権協定で解決済みとの立場で、被告の2社は履行を拒んだ。このため、原告側は、日本企業が韓国内に持つ資産を売却して賠償に充てる「現金化」の手続きを進めていた。
韓国政府が6日に発表した「解決策」では、元徴用工を支援する韓国政府傘下の「日帝強制動員被害者支援財団」が、遅延利子を含む賠償金相当額を原告らに支給する。その資金は企業からの「自発的な寄付」でまかなうこととし、1965年の日韓請求権・経済協力協定に基づく日本の経済協力で恩恵を受けた韓国鉄鋼大手のポスコをはじめ、韓国道路公社、韓国鉄道公社、韓国電力公社など16社が想定されている。一方、被告の日本企業の資金拠出は前提としていない。これまでに、大法院の判決で勝訴が確定した原告は15人で、賠償金は遅延利息を含め約40億ウォン(約4億2000万円)とされる。現在係争中の訴訟についても、原告の勝訴が確定すれば、同様に対応する予定。
尹大統領は解決策について「これまで政府が、被害者の立場を尊重しながら、韓日両国の共同利益と未来発展に符合する方法を模索した結果だ」と強調した。解決策には日本の政界からも評価する声が上がっている。林芳正外相は「日韓関係を健全な関係に戻すものとして評価する」とした。また、岸田文雄首相は日韓関係をめぐる歴史認識について「岸田政権としても、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいるし、今後も引き継いでいく」とし、歴代内閣などが示してきた植民地支配への「反省とおわび」の継承を表明した。
一方、原告の支援団体は「植民地支配の違法性と戦犯企業の反人道的な違法行為に対する賠償責任を認めた、2018年の大法院の判決を事実上、無力化するものだ」などと強く反発。また、原告側の弁護人は6日、記者会見を開き、政府の解決策に同意する原告に対しては債権消滅の手続きを進めるものの、同意しない原告は日本企業の韓国内資産に対する強制的な現金化を引き続き推し進めると明らかにした。
韓国の公共放送KBSによると、原告のうち、被告の日本企業にかわって韓国政府傘下の財団が支払う賠償金について、3人が受け取らないと表明、4人の遺族らは受け入れる意向を示しているという。
韓国ギャラップは8、9日に行った世論調査の結果を発表。解決策について尋ねたところ、「韓日関係と国益のために賛成」が35%、「日本の謝罪と補償がなく反対」が59%だった。与党支持層を除く多くの回答者では反対する意見が優勢だったという。また、日本との関係について尋ねたところ、「われわれが一部譲歩してでもできるだけ早く改善すべき」が31%、「日本の態度が変わらなければ急いで改善する必要がない」が64%だった。
尹政権としては、日韓関係改善を一気に加速させていきたい考えだが、否定的な世論が広がる中、今後も難しいかじ取りが続くことになりそうだ。
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