首脳会談は韓国政府が今月6日、元徴用工問題の解決策を示したことを踏まえて設定された。韓国大統領が日本を訪問して首脳会談を行うのは国際会議にあわせたものを除けば2011年以来、約12年ぶりのことだった。この日両首脳は長く途絶えてきた相互訪問「シャトル外交」を再開させることでも一致した。
岸田首相は会談で「私と尹大統領が将来に向けて日韓関係の新たな章を共に開く機会が訪れたことを大変うれしく思っている」と述べた。これに対し尹大統領は「韓国と自由、人権、法治と言った普遍的価値を共有する日本は、安全保障や経済、グローバルアジェンダで協力すべきパートナーだ。自由民主主義の価値が重大な挑戦に直面している今、両国の協力の必要性はますます高まっている」と述べた。
両首脳は夕方には共同記者会見に臨んだ。会見で岸田首相は「長い冬の時期を抜けて、2国間訪問としては約12年ぶりに韓国の大統領を日本にお迎えした」と述べた上で「1965年の国交正常化以来の友好協力関係の基盤に基づき、日韓関係をさらに発展させていくことで一致した」と説明した。首相はまた、元徴用工訴訟問題をめぐり、韓国政府が解決策を示したことについて「非常に厳しい状態にあった日韓関係を健全な関係に戻すためのものとして評価している」とし、「日本政府は1998年10月に発表した日韓共同宣言を含む歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいることを確認した」と説明した。
尹大統領は「今年は過去を直視し、相互理解と信頼に基づいた関係を発展させるため、1998年に発表された『金大中・小渕共同宣言』(日韓共同宣言)から25年になる年」とした上で、「宣言の精神を発展的に継承して両国の不幸な歴史を克服し、韓日協力の新たな時代を開く一歩となった」と強調した。
今回の首脳会談について、保守系の韓国最大紙、朝鮮日報は対韓輸出管理の強化措置の解除や、日韓軍事情報保護協定(GSOMIA)の運用正常化などを首脳会談の成果として評価する一方、「徴用問題について日本側がより前向きな立場を示さなかったのは残念だ」と指摘した。同紙は会談後の共同記者会見における岸田首相の発言内容について言及し、「1998年の共同宣言に明記された『反省と謝罪』という言葉には触れず、韓国の徴用被害者に対する慰労の表明もなかった。尹大統領の決断を受け日本に対応を求める韓国国民の期待に到底及ばないものだった」とした。一方、今回の会談で両首脳が「シャトル外交」の再開に合意したことに触れ、「尹大統領の訪日は韓日関係正常化のスタートと評価できるだろう。両首脳が今後も会談を重ね、信頼が積み上がれば、歴史問題など今回解消できなかった懸案も解決が可能になるはずだ」と期待を示した。
三大紙の中央日報は徴用工問題に関し、岸田首相が歴代内閣の歴史認識の継承を表明するにとどまったことへの「失望」を表明。その上で「未来志向の協力関係に進む土台を固めた点では点数を与えなければならない」とした。
同じく三大紙の東亜日報は社説で安全保障や先端技術をめぐって両国が協力する必要性を強調する一方「日本の態度には失望した」とした。
現政権に批判的なハンギョレ新聞は「歴史問題での賠償責任から逃れ、安保協力などの成果は確保した日本の外交的圧勝だ」などと尹大統領の初訪日を厳しく批判。また、両首脳が「シャトル外交」の再開を表明したことについて同紙は、「岸田首相は韓国訪問時期に関する記者からの質問に『適切な時期に今後検討する予定』とし、具体的な時期は決まっていないと答えた」と指摘した。さらに同紙は17日付の社説で「この日、尹大統領は『韓国の国益は日本の国益とウィンウィン』だと断言した。この言葉に同意する韓国人は多くないだろう」と厳しく論じた。
尹大統領は初訪日を終えて17日夜、帰国した。国内では尹大統領の対日姿勢に批判の声も上がっており、首脳会談を終えて、今後、世論の説得に苦慮することも予想される。
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