アップルは2014年に米国でアップルペイのサービスを開始した。その後、2016年に日本や中国でも提供が始まり、現在、世界70か国あまりで利用可能となっている。
アップルは韓国でも導入するため2017年から取り組みを行ってきたが、アップルペイが現地の規制や法律に違反しているかどうか規制当局が調査を進めていたため、アップルは長く、電子金融事業者として登録できなかった。
アップルペイは、ユーザーが自身の端末にクレジットカードの情報を事前に登録し、決済に必要な端末が備わっているコンビニなどの店舗で決済に利用することができる。
アップルペイを搭載しているiPhoneの場合、ユーロ・マスター・ビザ(EMV)ベースのNFC(近距離無線通信規格。近距離でデータをやり取りする技術で、クレジットカードの実物がなくてもスマートフォンを決済端末にかざすだけで決済ができる)端末でのみ決済が可能だが、韓国のカード加盟店の99%以上は、マグネットセキュアトランスミッション(MST)規格を採用している。そのため、これまで韓国の金融業界内では、アップルペイの韓国上陸は敵対的だとの見方が強く、金融当局はNFC端末の普及が信販専門金融業法に違反する可能性の有無を慎重に検討してきた。また、アップルペイの使用過程で、韓国内の支払い情報が海外の支払い業者に渡ることを懸念する声があり、個人情報保護法に違反するか否かについても調べを進めてきた。
そして、今年2月、金融当局は与信専門金融業法、電子金融取引法など関連法令とこれまでの法令解釈を考慮した結果、クレジットカード会社が必要な関連手続きを踏むことで、アップルペイのサービス導入を許可した。当時、金融委員会は「今後、アップルペイのサービスを通して、一般ユーザーたちに決済の便宜性が提供され、NFC技術を基盤にした新たな決済サービスの開発・導入が促進されることを期待する」としていた。
金融当局による調査が進められている間、韓国のカード会社大手の現代カードは、アップルペイの韓国内での排他的使用権を1年間得る内容の契約をめぐり、アップル側と交渉を続けてきた。
また、ソウル市内の一部店舗では、アップルペイのサービス開始を見据えて、NFC端末の取り付けを進めてきた。
そして今月21日、アップルは韓国でアップルペイのサービスを開始した。現時点で利用可能な加盟店は会員制量販店のコストコやカフェチェーンのトゥーサムプレイス、ロッテ百貨店、大型スーパーマーケットのホームプラスなどだ。
ただ、現時点でアップルペイに登録できるクレジットカードは現代カードのみとなっている。現代カードは商用クレジットカード市場首位。韓国はカード決済がかなり普及しているだけに、現代カードは国民の多くが所持する「国民的カード」とも言える。前述のように、アップルペイの韓国導入を見据え、早い段階からアップルと交渉を進めてきた現代カードは、サービス開始を機に市場シェアのさらなる拡大を狙う。
韓国ではこれまで、スマホ決済手段と言えばスマートフォンのGalaxyでおなじみのサムスンが運営しているサムスンペイが独占状態だった。そのため、携帯電話一つでカード決済ができる便利さのあるGalaxyのシェアは圧倒的だ。今回、アップルペイが韓国に上陸したことで、今後、サムスンペイが独占状態だったスマホ決済手段に変化が起きるのかということに加え、スマホ市場のシェアにも影響が及ぶことになるのか注目される。
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