改正検察庁法・改正刑事訴訟法は、当時、「共に民主党」の検察改革の一環で国会に提出された。それまでの刑事訴訟法では、検察が持つ捜査権として、不正腐敗、経済、公職者、選挙、防衛事業犯罪、大規模惨事のいわゆる「6大犯罪」に対する捜査権を明記していたが、改正案ではこうした条項が削除された。検事の職務は「公訴の提起及びその維持に必要な事項。ただし捜査は除く」と規定した。警察が送検した事件や、送致しなかった事件に対しても検察の捜査権をなくし、必要に応じて警察に保管捜査を要求するようにした。この法案について、検察幹部や当時野党だった「国民の力」は捜査権を事実上、警察に独占させるものだとして激しく反発した。
一方、「共に民主党」は当時、法案を国会に提出した理由について「検察の国家刑罰権の行使において、公正性と客観性が担保されておらず、検察が身内を守るような捜査や起訴が繰り返されている」とし、「令状の請求や公訴の提起、維持を専門に担当する機関として検察のあり方を再確立して、国民の信頼を回復させる」と説明していた。
昨年5月のユン・ソギョル(尹錫悦)政権の発足を前に、「共に民主党」は改正法案を強行可決。政権交代を前に「共に民主党」が法案成立を急いだ理由は、新政権発足後、当時のムン・ジェイン(文在寅)大統領やイ・ジェミョン(李在明)氏(現「共に民主党」代表)らへの「報復捜査」を回避する狙いがあったとみられていた。文政権をめぐっては当時、複数の疑惑が浮上しており、李代表にいたっては現在、市長時代の汚職疑惑などで検察の捜査を受けており、今月22日には起訴された。
「国民の力」の2議員は、「共に民主党」の主導で改正検察庁法・改正刑事訴訟法の成立を強行した過程において審議・表決権が侵害されたとして国会法制司法委員会の委員長を相手取り、権限争議審判請求を起こした。同審判は、国家機関の間で権限の有無やその範囲を巡り争いが生じた応じた場合に憲法裁判所が判断を下すもの。裁判官9人のうち、5人以上の賛成で認容、棄却、却下の決定を出せる。
憲法裁判所は今月23日、2議員の権限争議審判請求を認める決定を出した。裁判所は「国会法制司法委員長が2022年4月27日の法制司法委員全体会議で、検察庁法改正案と刑事訴訟法改正案の可決を宣言した行為は、国会議員である請求人の法律案真偽・表決権を侵害した」と指摘。裁判官9人のうち5人の多数意見で、「手続きの一部が憲法違反だった」との判断を示した。一方、法律の可決自体は有効だと判断し、改正法は維持される見通しとなった。
しかし、尹政権は昨年8月、検察の捜査範囲に関する規定を改正する大統領令を公布し、改正検察庁法と改正刑事訴訟法による捜査範囲の縮小を防いだ。大統領令で公職者犯罪や選挙汚職、虚偽告訴や偽証などの犯罪を再び検察が捜査できるようにした。
大統領令公布後、検察は北朝鮮政策をめぐる職権乱用罪などで文政権の閣僚や大統領府高官を逮捕、起訴した。また、前述したように、今月22日には、「共に民主党」の李代表を背任などの罪で在宅起訴した。李氏はソウル近郊のキョンギド(京畿道)・ソンナム(城南)市長だった2014年以降、宅地開発事業の内部情報を民間業者に流し、巨額の不正利益を得させたことによって、市開発公社に約4900億ウォン(約500億円)の損害を与えたとされる。李氏は「結論ありきの起訴で、検察当局による政治ショーだ。法廷で真実を明らかにするために最善を尽くす」と起訴事実を全面否定し、法廷で争う姿勢を示している。
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