<W解説>「韓国大統領室の外交・安保ラインに異変」と韓国メディア=3週間のうちに主要秘書官、国家安保室長が辞任(画像提供:wowkorea)
<W解説>「韓国大統領室の外交・安保ラインに異変」と韓国メディア=3週間のうちに主要秘書官、国家安保室長が辞任(画像提供:wowkorea)
韓国で、外交や安全保障政策を取りまとめる国家安保室長が先月29日、突然辞任した。日韓首脳会談を控えた10日には大統領室儀典秘書官が、27日には大統領室外交秘書官が交代しており、韓国の聯合ニュースは「ユン・ソギョル(尹錫悦)大統領の訪米を約1か月後に控え、大統領室の外交・安全保障ラインに『異変』が見られている」と伝えた。

キム・ソンハン国家安保室長は29日、声明を発表。「本日付で国家安保室長の職から退く」とした上で、「1年前、大統領から提案を受けた際、韓米同盟を復元し、韓日関係を改善して韓米日の安保協力を強化するための土台をつくった後、大学に戻るとお伝えした。その条件がある程度満たされたと思う。(尹氏の)米国訪問の準備もしっかり進められており、後任も支障なく業務を遂行できると思う」とした。また「私をめぐる論争がこれ以上外交と国政運営の負担にならないことを望む」と述べた。

キム氏は尹政権が発足した昨年5月に国家安保室長に就任。米韓同盟を重視し、対北朝鮮政策でも「原則のある南北関係」を前提に非核化を推進する立場を堅持してきた。

キム氏の電撃辞任について聯合ニュースは「尹大統領は4月末に米国を国賓として訪問し、バイデン大統領と首脳会談を行う予定で、尹政権最大の外交イベントといえる韓米首脳会談の準備にも影響が避けられないとみられる」と報じた。

キム氏の辞任表明に先立ち、韓国紙の東亜日報は、尹氏の国賓訪米の調整などで問題が生じ、大統領室が室長の交代を検討していると報じていた。これまで伝えられた内容によると、キム氏は来月予定されている米韓首脳会談関連で、尹氏の訪米時に韓国ガールズグループの公演が企画されたが、安保室側が各方面への報告を怠ったためキム氏が責任を問われたとの見方などが出ている。首脳会談における両国の親善に向けた重要なイベントとなるはずだっただけに、キム氏は事実上、更迭されたと報じられている。聯合ニュースは、この公演に「バイデン大統領のジル夫人が特別な関心を示していたとの情報もある」と伝えた。

尹氏は辞意を受け入れ、後任にチョ・テヨン前駐米大使を充てた。チョ氏は外交官出身で、パク・クネ(朴槿恵)政権で外交部第1次官、国家安保室第1次長を歴任した。

韓国紙の朝鮮日報は「今は米中の新冷戦とロシアによるウクライナ侵攻、北朝鮮の核実験など安全保障面で非常に不安な時期だ。世界的な銀行が破綻のリスクにさらされるなど、経済危機も非常に流動的だ」とした上で、「このような時に国家安保室が揺らいでいるようでは困る」と批判。「幸い国家安保室長に新たに就任するチョ・テヨン大使は老練な外交官として定評がある人物だ。来月の韓米首脳会談、5月の韓米日3か国首脳会議に向けしっかりと準備してもらいたい」と注文した。

尹政権ではキム氏の辞任に先立って大統領室の儀典秘書官と外交秘書官も相次いで交代している。大統領室は交代理由について、キム・イルボム儀典秘書官は「個人の都合による辞任」、イ・ムンヒ外交秘書官は「激務による交代」と説明しているが、ここ3週間で尹大統領を支えてきた秘書官が立て続けに後退するのは極めて異例だ。

韓国紙の中央日報は先月29日付の社説で「尹大統領の米国国賓訪問まで1か月足らずの期間に韓国大統領室の外交・安保ラインに関する乱脈ぶりが表面化し、憂慮される」と指摘。「大統領室が国民が納得できる説明をしていないことから、憶測まで広がる状況だ」と批判した。その上で「必要があれば、大統領室が人事交代を行うのは当然だ」と一定の理解を示しながらも「しかし、最も集中的な外交力が必要な時期に、背景も不明な状態で突然人事交代のニュースだけが伝えられたため混乱が大きくなるのだ」と問題点を指摘。「北朝鮮の核の脅威と米国、中国、日本、ロシアの4強発の外交・安保懸念が相次ぐこの時期に、内部対応の戦列が乱れないよう、大統領室は迅速に収拾してもらいたい」と注文した。

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