事件は今月3日、塾通いの中高生が行き交うソウル市江南区で発生した。2人組の男女が高校生に駆け寄り「集中力や記憶力を上げる飲料の試飲会をしている」と称して飲料を渡した。その際、「今後購入したいかどうかを調査するために必要」として生徒から保護者の電話番号を聞き出した。その後、飲んだ生徒らは体の異常を訴えた。犯行グループは保護者に対し「子供が麻薬を使用したと学校や警察に通報する」と脅して金銭を要求したという。警察は事件に関わった疑いのある男女計6人を拘束した。検挙された容疑者らは「インターネットで高額アルバイトの募集を見て指示通りに試飲会をしただけ」「バイク便でドリンクを受け取った」などと供述。警察は主犯が別にいるものと見て捜査を進めている。
事件が起きた江南は塾が立ち並ぶ場所としても知られ、加熱する韓国の学歴社会を描いた大ヒットドラマ「SKYキャッスル~上流階級の妻たち~」の舞台にもなった。富裕層が多く住む、高級住宅エリアとしても有名だ。
事件は受験勉強に励む高校生に「集中力や記憶力を上げる飲料」といった巧みな言葉で近寄り、親を脅して金銭をたかるという卑劣な手口で行われた。
事件を受け、ユン・ソギョル(尹錫悦)大統領は「薬物が高校生にまで浸透した衝撃的な事件」とし、「検察と警察は力を総動員して麻薬の流通・販売組織の根絶、犯罪による収益を最後まで追跡せよ」と指示した。
10日、大検察庁の反腐敗・強行部長と警察庁の国家捜査本部刑事局長を共同本部長に840人の麻薬捜査員らで構成する、麻薬犯罪特別捜査本部の設置が決まった。検察は現在運用中の全国薬物犯罪特別捜査チームなどから377人、警察は17市・道の警察庁と薬物犯罪専門の警察署から麻薬捜査員371人を派遣する。空港と港湾を通じて韓国内に持ち込まれる薬物に対応するため、関税庁も各地の税関から計92人を派遣する。捜査は青少年に対する違法薬物の供給、インターネット上の違法薬物の流通、違法薬物の密輸入、医療用麻薬の製造・流通に重点を置く。
一般的に、人口10万人あたりの麻薬犯罪者の数が年間20人以下の場合、麻薬に対してクリーンな国とされる。この基準に則り、韓国はかつて自国を「麻薬清浄国」と呼んでいた。しかし、現在は韓国社会に麻薬が入り込んでいる状況で、昨年の麻薬の摘発件数は771件に上り、計624キロ、額にして600億ウォン(約62億円)に上る。麻薬犯罪はとりわけ若者の間で急増している。昨年上半期の麻薬犯罪での摘発者のうち、10代は292人、20代は2717人で全体の35.1%を占めた。警察庁は「好奇心による服用を越え、流通にも加担している」と指摘している。
今年は1~2月に薬物事犯での検挙者は2600人に上った。過去最多を記録した昨年の同期間に比べても32.4%多い。このペースでいけば、今年初めて年間2万人を超える可能性もある。
事態を重く見た韓国政府はこのほど総合対策を発表。主な税関に麻薬担当組織を設けたり、オンラインで行われる麻薬取引の取り締まりを強化するために担当要員を3倍に増やしたりするなど、麻薬根絶に向けた体制の強化に既に乗り出していた。しかし、今回またしても衝撃的な薬物事件が発生した。聯合ニュースによると、これまで薬物捜査を強化してきたのにも関わらず事件が発生し続けているという報道陣の指摘に、特別捜査本部の関係者は「犯罪というものは短時間で根絶するのが難しい面がある」とし、「全官庁が協力し、検挙人員と押収物が増えれば、それだけ市中の流通が減り、時間が立てば意味のある成果があらわれるのではないかと思う」と話した。
取り締まりを強化するとともに、若者の検挙件数が増えていることから、学校現場においても薬物の恐ろしさを伝える教育が必要になってくるだろう。
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