<W解説>元徴用工訴訟問題、賠償金受け取り拒否の5人を韓国政府は説得できるか?(画像提供:wowkorea)
<W解説>元徴用工訴訟問題、賠償金受け取り拒否の5人を韓国政府は説得できるか?(画像提供:wowkorea)
日韓の懸案となってきた元徴用工訴訟問題をめぐり、韓国外交部(部は省に相当)は14日、日本企業に命じられた賠償支払いを韓国の財団が肩代わりするとの解決策に基づき、勝訴した元徴用工ら15人のうち10人の遺族への賠償金相当額の支給が同日までに完了したことを明らかにした。大統領室は受け入れた遺族に対し謝意を表し、拒否した5人とも引き続き意思疎通を図る考えを示した。

元徴用工訴訟をめぐっては、韓国大法院が2018年10月、雇用主だった三菱重工業と日本製鉄(旧新日鉄住金)に賠償を命じた。しかし、日本としては戦時中の賠償問題に関しては1965年の日韓請求権協定で解決済みとの立場で、被告の2社は履行を拒んだ。このため、原告側は、日本企業が韓国内に持つ資産を売却して賠償に充てる「現金化」の手続きが進められていた。

元徴用工訴訟問題は日韓最大の懸案として、なかなか解決の糸口が見えずに月日だけが過ぎることとなったが、昨年5月、ユン・ソギョル(尹錫悦)政権の発足を機に風向きが変わった。尹大統領は大統領選候補者時から日韓関係改善に意欲を見せ、政権発足後間もない時期に解決策を探るための官民合同の協議会を立ち上げるなど、問題解決に向けた動きを活発化させた。

そして今年3月、韓国政府は「解決策」を発表。元徴用工を支援する韓国政府傘下の「日帝強制動員被害者支援財団」が、元徴用工らへの賠償を命じられた被告の日本製鉄や三菱重工業に代わって遅延利子を含む賠償金相当額を原告らに支給するというもので、その資金は企業からの「自発的な寄付」でまかなうことになっている。寄付は1965年の日韓請求権・経済協力協定に基づく日本の経済協力で恩恵を受けた韓国鉄鋼大手のポスコをはじめとする韓国企業が行う。既にポスコは先月15日、財団に40億ウォン(約4億円)を寄付した。

これまでに、大法院の判決で勝訴が確定した原告は15人で、賠償金は遅延利息を含め約40億ウォン(約4億2000万円)とされる。現在係争中の訴訟についても、原告の勝訴が確定すれば、同様に対応する予定。

韓国政府が解決策を発表した際、尹大統領は解決策について「これまで政府が、被害者の立場を尊重しながら、韓日両国の共同利益と未来発展に符合する方法を模索した結果だ」と強調した。

一方、原告の支援団体は「植民地支配の違法性と戦犯企業の反人道的な違法行為に対する賠償責任を認めた2018年の大法院の判決を無力化するものだ」などと強く反発した。また、最大野党「共に民主党」も解決策を批判しており、イ・ジェミョン(李在明)代表は今月11日、ソウルの外信記者クラブで会見し、解決策について「撤回されることが望ましい」と強調した。李代表は「韓日関係改善は東北アジアの安定のために必ず必要だ」とする一方、「(日本による)戦争犯罪の被害者の権利をはく奪してはだめだ」と主張した。

こうした中、外交部は13日、元徴用工15人のうち10人の遺族が韓国政府の解決策に基づく支給金を受け取る意思を示したと発表し、14日までに10人への支払いが完了した。日韓関係の懸案の解決への理解を求める姿勢に多くが応じた格好だが、残る5人の原告らは受け取りを拒否しており、韓国政府は引き続き説得を続ける方針。拒否の意向を示した中には新日鉄住金を相手取った訴訟で勝訴したイ・チュンシク(李春植)さん、三菱重工業を相手取った訴訟で勝訴が確定したヤン・グムドク(梁錦徳)さんとキム・ソンジュ(金性珠)さんの、存命の元徴用工3人が含まれている。

外交部アジア太平洋局のソ・ミンジョン局長は「政府は今回の解決策により、被害者と遺族の傷が少しでも癒されるよう引き続き努力する」と話した。

韓国紙の東亜日報は「賠償金手続きには弾みがついたが、政府は依然として元徴用工問題解決の難題に直面している」と指摘。「元徴用工の補償とは別に、日本の誠意ある対応が必要だという指摘があるが、日本政府の謝罪や被告企業の金銭的貢献などの対応はまだない。また、1965年の韓日請求権協定で恩恵を受けた企業のうち、財団に約束した40億ウォンを寄託したポスコ以外の韓国企業が財団弁済金の財源確保に消極的なことも政府にとっては課題だ」と解説した。

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