<W解説>韓国の海難史上最悪の惨事「セウォル号事故」から9年…安全体制の構築は道半ば(画像提供:wowkorea)
<W解説>韓国の海難史上最悪の惨事「セウォル号事故」から9年…安全体制の構築は道半ば(画像提供:wowkorea)
2014年4月に韓国南西部のチンド(珍島)沖合で旅客船セウォル号が沈没し、304人が死亡・行方不明になった事故から今月16日で9年となった。事故現場付近では同日、遺族が船上追悼式を開いた。事故では修学旅行中の高校生も多数犠牲となった。生徒たちが通っていた高校があるソウル郊外のアンサン(安山)市でも同日、追悼式が開かれた。

チョンヘジン(清海鎮)海運所属の大型世客船セウォル号は修学旅行中の高校生325人を含む一般乗客と船員、計476人を乗せ、韓国北西部のインチョン(仁川)港から南部のチェジュ(済州)島へ向かっていたところ、2014年4月16日午前9時前、珍島郡のクァンメ(観梅)島沖の海上で転覆・沈没した。この事故で、乗客・乗員299人が死亡、5人が現在も行方不明となっており、韓国の海難史上、最悪の惨事と言われている。

当時の視界は良好、波も航行に支障をきたすような高さではなく、事故原因については船体の故障や検査制度の不備、不適切な改造、過積載などが挙げられている。この事故では発生後に不正確な情報が錯綜(さくそう)したほか、救助体制について乗員や海洋警察の過失が問われることとなった。

2015年1月には第1期調査委員会が発足するも、翌6月には調査が終了。214の調査項目のうち、公開されたのはわずか1件だった。2017年7月には沈没の原因を調査する船体調査委員会が発足。しかし、調査報告書では機械の欠陥などの理由で沈没したとする「内因説」と、衝突など外力による沈没の可能性を追加で調査しなければならないという内容の「外力説」の2つの結論が併記され、今なおはっきりした沈没原因はわかっていない。

事故の責任を問う裁判では、2015年11月、船長に無期懲役が確定した。最高裁は船長について自分が助かるために300人以上の乗客を事実上、水死させたと指摘。殺人罪で無期懲役とした控訴審の判決を支持した。また、救助に失敗した責任が問われた海洋警察官の裁判は、当時の艇長が2015年に懲役3年が確定したが、当時の海洋警察庁長らの裁判は現在も続いている。

事故から9年となった今月16日、事故現場付近の海上で追悼式が行われ、遺族ら100人が犠牲者を悼んだ。事故で犠牲となった生徒が通っていた高校がある安山市でも追悼の「セウォル号惨事9周忌記憶式」が開かれた。追悼の辞を述べた海洋水産部のチョ・スンファン長官は「犠牲者一人一人の冥福を祈る。惨事が遺した教訓を胸に再確認し、希望と生命があふれる海にしていく」と述べた。

追悼式では悲惨な事故を繰り返すことのないよう、誓いを新たにしたが、事故の生存者からはこんな指摘も出ている。事故当時、高校2年だった生存者の男性(26)は、韓国紙・ハンギョレ新聞の取材に「9年経っても世の中は驚くほど変わっていません。災害が起きれば被害者や生存者だけが残り、そのような世の中を作らないためにもがき苦しんでいるのに、他の人たちはただ見ているだけ。災害(事故)は誰にでも突然訪れるということを、どうしてまだわからないのでしょうか」と語った。

韓国では昨年10月、ソウルの繁華街、イテウォン(梨泰院)で雑踏事故が起き、日本人2人を含む159人が死亡。セウォル号事故以来の大惨事となった。この事故でも安全対策の不備が指摘され、韓国警察庁は今年2月、捜査結果を発表し、事故について、管轄の自治体や警察、消防など、法令上、安全予防や対応の義務がある機関が事前の安全対策を怠るなど、予防対策を取らなかったために起きた「人災」と結論付けた。

韓国紙の中央日報は17日付の社説で「安全を脅かす事故への備えだけは与野党の区分なく額を突き合わせなければならない。それだけが、9年前、珍島近海で救助することができなかった304人に対する贖罪(しょくざい)への道だ」と訴えた。

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