<W解説>稼働停止中のはずの設備が動いている?中国から資金調達の疑いも=北朝鮮の開城工業団地(画像提供:wowkorea)
<W解説>稼働停止中のはずの設備が動いている?中国から資金調達の疑いも=北朝鮮の開城工業団地(画像提供:wowkorea)
2016年まで韓国と北朝鮮が共同で運営し、現在は操業が中断されている北朝鮮南部・ケソン(開城)の開城工業団地で、北朝鮮が韓国側設備を無断で使用していると、今月18日、米政府系メディアが報じた。また、韓国の有力紙・中央日報は、団地内の設備を稼働させるために、北朝鮮は中国から資金調達も行っていると伝えた。これについて韓国の統一部(部は省に相当)は「関係機関と共に確認を進めている」と明らかにした。

開城工業団地は、北朝鮮のキム・ジョンイル(金正日)国防委員長と韓国のキム・デジュン(金大中)大統領(肩書はいずれも当時)との合意に基づき、南北軍事境界線に近い開城郊外に造成された韓国企業向け工業団地。基本的に北朝鮮が土地と労働力、韓国が資金と技術力を提供するとの合意の下、2004年に操業を開始した。団地内では繊維や機械、金属、電子部品などが生産され、規模は年々拡大。生産額は2005年に1491万ドル(約20億円)、2006年7347万ドル、2007年1億8478万ドル、2008年に2億5142万ドル、2009年には2億5647万ドルに上った。2010年には韓国の中小企業121社が生産を行い、韓国人労働者約800人、北朝鮮労働者約4万4000人が従事した。

しかし、2013年2月に北朝鮮が地下核実験を強行したことがきっかけで両国関係が悪化。同年4~9月半ばまで操業停止に陥った。その後に再開するも、北朝鮮による核ミサイル開発の資金源を断つため、2016年2月、韓国のパク・クネ(朴槿恵)政権によって再び操業停止となった。

2018年9月の南北首脳会談で操業を再開させることで合意したが、その後、南北関係はまたも悪化。そして2020年6月9日、北朝鮮は団地内にあった南北共同連絡事務所を爆破させた。南北融和の象徴ともされた建物が木っ端みじんに破壊される映像は世界に衝撃を与えた。

政権公約として南北融和を掲げたムン・ジェイン(文在寅)前大統領は南北経済共同体の構築に向け「朝鮮半島新経済地図」などの構想を通じて、開城工業団地の再開を含む対北アプローチを試みた。しかし、北朝鮮はミサイル開発を続け、特に2019年2月の米朝首脳会談の決裂で南北関係が一気に悪化して以降は南北の経済交流は途絶え、現在、工業団地の操業は停止している。

しかし米政府系メディアのラジオ自由アジア(RFA)は今月18日、北朝鮮が団地の韓国側設備を無断で使用している状況が熱赤外線衛生画像で捉えられたと報じた。RFAによると、今年2月24日に開城工業団地を撮影した衛星画像で一部の工場が赤く表示された。設熱赤外線で温度を感知すると、温度が高いところは赤、低いところは青く表示される。赤く表示されたエリアは4か所確認され、ここで設備が稼働していることが推定されるという。RFAはこの4か所のうち2か所は電子工場、1か所は繊維工場、もう1か所は炊飯器などの生産施設を持つ製造工場だとする韓国専門家の見方を伝えた。国際社会による経済制裁や新型コロナウイルスの流行による交易制限で経済がひっ迫したことを受け、工場で生産した製品を密輸して外貨稼ぎに充てている可能性もある。

団地内ではこれまでにも無断操業が指摘されてきた。昨年4月には操業が停止中のはずの団地内で火災が発生。設備の再稼働に伴う出火とみられ、韓国当局は団地内での車両や人の動きを確認した。今回、再び無断操業の疑いを指摘する報道が出たことを受け、韓国統一部の当局者は18日、「無断稼働について法的対応を検討している」とし、「韓国企業の財産権を侵害する行為に対し、時間がかかろうとも北に責任を問い、必要な賠償を要求していく」と強調した。

また、中央日報によると、北朝鮮が団地に中国企業からの投資を受けるため、中朝国境地帯で活動する起業家に、団地内の設備や試作品などの写真を送ったと報じた。これについて韓国の公共放送KBSは「北朝鮮が開城工業団地にある韓国企業が所有する工場設備の一部を中国に売り渡したり、中国企業から注文を受けて工場で製品を製造したりしようとしている可能性があるとの見方が出ている」と伝えた。

この報道について大統領室の関係者は「北朝鮮は、韓国を排除して、工業団地を利用するため中国からの資金調達を図っているとの情報を得ている」とし、「国連による対北朝鮮制裁に違反する可能性があり、中国や北朝鮮に、この問題を注意深く考えることを促している」と述べた。

韓国としては団地内の施設の無断稼働、設備の無断使用は、韓国の財産権を侵害する行為との認識で、財産権侵害の問題は、今後、南北関係の改善を図ろうとした時、争点の一つになるものとみられる。

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