青瓦台をめぐっては、ムン・ジェイン(文在寅)前政権の「密室政治」を批判した尹大統領が、国民との距離を縮めたいと「青瓦台を国民にお返しする」と宣言。昨年5月の尹大統領の就任式に合わせ、青瓦台は市民に開放された。青瓦台にあった大統領執務室はソウル・ヨンサン(龍山)区の旧国防部(部は省に相当)庁舎に移転した。10階建ての建物の中に執務室のほか、秘書室、記者室など職務に必要な全てが入っており、大統領と側近らが随時報告・協議ができる環境にある。
青瓦台がある地域にはもともと高麗時代に王族が住んでいた。日本統治時代の1939年7月、朝鮮総督官邸が建設され、1948年に大韓民国が成立すると、初代大統領のイ・スンマン(李承晩)が旧・朝鮮総督官邸をキョンムデ(景武台)の名称で官邸・公邸として使用開始。1960年12月に第4代大統領のユン・ボソンが青瓦台に名称を変更した。
現在の青瓦台の建物はノ・テウ(盧泰愚)政権時代の1991年に完成。米ホワイトハウスの面積の3倍を超える25平方メートルの広大な敷地の中に大統領と家族が住む官邸、大統領の執務室、秘書官たちが詰める建物などが建てられた。大統領執務室がある本館と秘書たちが詰める建物の距離は500メートル以上もあることからも、その広大さがわかる。ちなみに、青瓦台という名称は、官邸の屋根が青い瓦でふかれていることに由来する。
青瓦台が昨年5月10日に一般開放されてから間もなく1年となるが、今月24日までの累計観覧者数は約333万500人に上る。そのうち外国人は約5万6500人で、観覧者全体の1.7%だった。新型コロナウイルスの収束と共に韓国を訪れる外国人旅行者は増えており、青瓦台の外国人観覧者も今後さらに拡大するものとみられる。
文化体育観光部は今月10日、青瓦台を歴史と文化、自然が調和した空間として整備し、世界的なランドマークとすることを盛り込んだ青瓦台の運営基本方向を発表した。それによると今後、青瓦台では大統領の歴史、文化芸術、文化財、樹木の四つの中核コンテンツに関する展示や公演、探訪プログラムを展開する。大統領の歴史では、青瓦台の本館などで歴代大統領の人生と哲学に触れることのできる特別展示を実施する。また、庭園や緑地園ではKカルチャーの神髄を感じることができる公演を年間を通して開催するという。
文化体育観光部は既に青瓦台一帯で文化・芸術・歴史の複合空間とするためのプロジェクトを実施してきた。昨年12月から約1か月開催された文学特別展は好評で、同部が行った調査では、観覧者の92%が「とても良かった」と回答した。
今月19日には、青瓦台で「青瓦台K観光ランドマーク、私が青瓦台観光ガイドだ」の宣言式が開かれた。同部は、青瓦台と近隣の歴史・文化資源、青瓦台の裏にそびえる山を組み合わせたテーマ型徒歩観光コースを整備。宣言式で草案が紹介された。同部のパク・ボギュン(朴普均)長官は「青瓦台は大統領の歴史、文化芸術、自然、伝統文化財が共存する魅力的かつ競争力のある観光空間だ」とPRした。
同部としては、青瓦台を世界的な観光ランドマークとしたい考えだが、青瓦台内には貴重な文化遺産が存在し、開放中心の活用計画でそれらの価値が毀損されはしないかとの懸念も出ている。現政権に批判的なハンギョレ新聞は昨年7月、青瓦台の今後を心配する記事を早々に掲載。同紙の取材に答えた建築史が専門のソウル市立大学のイ・ガングン教授は「青瓦台の領域は高麗時代の南宮別宮から朝鮮時代の王宮後苑を経て、21世紀の大統領権府に至るまで、1000年近く権力の中心を維持した世界で類を見ない特異な空間だ。歴史性を見出し、回復させる過程を前提としていない開放中心の娯楽空間化政策は、文化財界はもちろん、文化界の抵抗と批判が避けられないだろう」と指摘した。
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