<W解説>韓国・尹錫悦政権の発足から1年、成果と課題(画像提供:wowkorea)
<W解説>韓国・尹錫悦政権の発足から1年、成果と課題(画像提供:wowkorea)
韓国のユン・ソギョル(尹錫悦)政権が発足してから10日で丸1年となった。尹大統領は9日の閣議でこの1年を振り返り、特に外交・安全保障面での大きな変化を強調した。一方、大統領選で尹氏と激しく争った最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)代表は、「放任・放置と自由は明確に区分されるものであるが、自由という名の下で国家の責任を全て放り出したのではないかと考える」と尹政権を批判した。

尹氏は昨年3月の大統領選に、当時最大野党だった保守系の「国民の力」の候補として出馬。革新系の「共に民主党」候補の李氏にわずか24万7077票、得票率では0.73ポイントの僅差で勝利した。国会議員経験のない大統領として、既成政治のしきたりを破り、理念にとらわれない実用主義路線を取るものと期待された。

1年前の5月10日、韓国の第20代大統領に就任した尹氏は就任式で演説し、「自由民主主義と市場経済の体制を基盤に国民が真の主人となる国へと再建し、国際社会で責任と役割を果たす国をつくらなければならないという時代的な要求を受けてこの場に立った」と表明した。

就任と同時にまず行ったことは、それまで権威の象徴だった青瓦台(大統領府)の開放だ。選挙戦で尹氏は「国民との距離を縮めたい」として青瓦台を「国民にお返しする」と宣言。尹氏の就任日から開放された青瓦台は、今や韓国の人気観光スポットとなっている。

尹氏は「自由」と「連帯」の中核的な価値を前面に掲げ、ムン・ジェイン(文在寅)前政権の国政基調からの全面転換に乗り出した。

経済政策では、民間主導、市場中心の成長を掲げ、文前政権とは異なる路線を取った。

また、労働、年金・教育分野の「3大改革」を推進し、原発や半導体など戦略産業の育成に力を注いだ。

尹氏は9日の閣議で1年を振り返り、「私が大統領職に就任した1年前の頃を考えると、外交安保ほど大きな変化を遂げた分野はない」と強調。就任11日目に行われた米韓首脳会談、NATO(北大西洋条約機構)首脳会議出席、先月の国賓訪米など、これまでの歴訪の成果を列挙した。

また、尹氏は日本との関係改善に、大統領選候補者時代から強い意欲を見せ、日韓最大の懸案となっていた元徴用工訴訟問題の解決に着手。韓国政府は今年3月、日本企業に命じられた賠償金の支払いを韓国の財団が肩代わりするという内容の解決策を発表した。同月、尹氏は訪日し、岸田文雄首相と日韓首脳会談を行った。そして今月7日には岸田首相が就任後初めて訪韓。2011年12月のイ・ミョンバク(李明博)大統領の訪日を最後に途絶えていた日韓首脳同士の相互訪問「シャトル外交」が再開した。

尹氏は9日の閣議で、日韓関係について「少し前まで想像できなかったことがいま、韓日の間で行われている」と成果を強調。「互いに交流、協力しながら信頼を積み重ねていけば、韓日関係が過去に最も良かった時期を超え、新しい未来を開拓していけるだろう」と今後のさらなる関係改善に自信を示した。

米国との関係では、経済・安保を中心とする協力強化に乗り出した。

安全保障分野では北朝鮮のミサイル発射に対応するためのいわゆる「3軸体系」を強化したほか、米韓合同軍事演習の再開、先月の米韓首脳会談で発表された「ワシントン宣言」に基づく拡大抑止の強化などに乗り出した。尹氏は9日の閣議で、「北朝鮮の善意だけに頼っていた韓国の安全保障も変化した」と述べ、前政権の対北政策から転換させたことを強調した。

一方、野党「共に民主党」の政策委員会とシンクタンク・民主研究院は9日、尹政権の1年を検証する討論会を国会で開催。「崩壊した1年、耐え抜いた人たち」とのテーマで議論し、李代表は「国家はなぜ存在するか考えさせられる大統領就任1年だった。国家は国民のために存在し、国民の安全で幸福な生活を保障する義務があるが、1年を振り返ると、国民の生活がこれほどまで悪くなり得るのかと考えざるを得ない」と指摘した。その上で尹政権に向け「就任1年を機に、考えも政策も変え、新たな希望を築いていくことを願う」と述べた。

また、聯合ニュースは「国政全般でさまざまな成果を上げたとの評価もあるが、影の部分も存在する」と指摘。物価高、高金利、ウォン安ドル高の「3高」の対応や、日米韓3か国の関係が深まるほど反発が高まる北朝鮮や中国、ロシアとの関係をどう管理するかが最大の難題だと解説した。

尹氏は8日、ユーチューブチャンネル「尹錫悦TV」に「まっすぐ立つ大韓民国に向けた大統領の約束」と題した動画を投稿。安保・公正・国益・未来・国格の5分野で構成され、国民と交わした約束を成し遂げるための1年の歩みを振り返りつつ、今後に向け、決意を示した。

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