<W解説>処理水放出めぐる韓国視察団の派遣で、韓国世論は変わるか?(画像提供:wowkorea)
<W解説>処理水放出めぐる韓国視察団の派遣で、韓国世論は変わるか?(画像提供:wowkorea)
東京電力福島第1原発事故で生じた処理水の海洋放出をめぐり、今月下旬に韓国の専門家らによる視察団が日本を訪れる予定となっている中、きょう12日にソウルで局長級協議が開かれることになった。日本政府が韓国政府に対し、処理水の現状などについて説明するという。処理水の海洋放出について韓国国内に懸念の声が根強い中、日本政府としては視察団が現地を訪れるのを前に丁寧に説明を行うことで、放出に向けた環境整備につなげたい考えだ。

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福島第1原発の処理水について、日本政府はことし夏ごろにかけて海へ放出する方針で、この計画をめぐっては、国際原子力機関(IAEA)が現地視察を通じて妥当性を確認する検証作業を進めており、今年1月に来日したIAEA幹部も「設備の使用前監査などが国際的な安全基準に沿って適切に行われている」と評価している。

しかし、韓国では、日本政府が2021年4月に海洋放出を閣議決定した当時から激しい反発が起きている。韓国政府は当時「日本政府からの事前協議がなく、日本側が一方的に決定したもので遺憾だ」と批判。これに呼応するように、ほとんどの韓国メディアは批判的に報道。海洋放出に関連する記事では現在もなお処理水を「汚染水」と表現している。反日市民団体や漁業関連団体からも激しい反発が起きた。日本産の海産物に不安が高まり、韓国産と偽って流通させていたとして韓国の水産業者が摘発されたこともあった。

一方、ことし2月、韓国海洋技術科学院と韓国原子力研究院の共同研究チームは、南部のチェジュ(済州)島で開催された韓国防災学会の学術大会で、海洋放出された処理水がどう拡散するかのシミュレーション結果を発表。処理水を海洋放出した場合でも、韓国海域に「大きな影響がない」と結論づけた。

しかし、自国の研究機関の結果をもってしても、最大野党「共に民主党」は、「日本のでたらめなデータと主張を基につくられた(研究)結果で、信頼性を期待し難い」と批判した。市民団体も「日本政府の主張を鵜呑みにしたものだ」と結果を疑問視した。

韓国国民の懸念が依然、根強い中、今月7日に行われた岸田文雄首相と韓国のユン・ソギョル(尹錫悦)大統領による日韓首脳会談で、両首脳は韓国の専門家らによる視察団を現地に派遣することで合意した。会談で岸田首相は尹大統領に対し「韓国内で引き続き懸念の声が大きいことを理解している。自国民や韓国国民の健康や海洋環境に悪影響を与えるような形で放出を認めることはない」と伝えたという。尹大統領は会談後の共同記者会見で「隣国である韓国国民の健康と安全に関する懸念払しょくに努力すると約束された」と岸田首相を評価した。

しかし、韓国の市民団体「歴史主義と平和な韓日関係のための共同行動(韓日歴史正義平和行動)」などは今月9日、国会で記者会見を開き、首脳会談について「日本の汚染水投棄(海洋放出)のための名分づくりに過ぎなかった」と批判。視察団の派遣についても「付帯的な計画のない視察は韓国が日本の汚染水放出を理解したものと利用される。形だけの視察団派遣ではなく、共同調査団を構成し、福島産水産物の輸入禁止を正式な措置に転換すべきだ」と主張した。

一方、西村康稔経済産業大臣は、韓国の専門家が現地を視察することで、韓国内で安全性について理解が深まることに期待を寄せ、専門家には処理水のタンクの状況や放出方法などを日本側から説明する考えを示した。ただ、この視察は「処理水の安全性について評価や確認を行うものではない」とけん制した。

視察団の派遣は今月下旬に予定されているが、これを前に日本政府はきょう12日、韓国政府向けに処理水の現状に関する説明会をソウルで開く。日本からは外務省や資源エネルギー庁の幹部が出席するほか、原子力規制庁や東京電力の担当者らもオンラインで参加し、計画の安全性や科学的根拠を説明する方針。韓国からは外交部(外務省に相当)のユン・ヒョンス気候環境科学外交局長らが出席する。

韓国政府内では、処理水の海洋放出をめぐり、これまで政府としても公式に使用してきた「汚染水」の表記を「処理水」に変更する検討に着手しているとされる。視察団が現地を訪れた後、韓国世論の動向を見極めて最終判断するものとみられている。

視察団の派遣を契機に、韓国内の理解が深まることになるのか注目される。

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