昨年5月9日に任期を終えた文氏は、その日から南東部のキョンサンナムド(慶尚南道)・ヤンサン(梁山)市ピョンサン(平山)村の新居で新生活を始めた。文氏は退任前「政治には関与せず、普通の市民として生きる。近くにある寺に行ったり、アルプスに登ったり、家庭菜園の手入れをしたり、犬や猫、ニワトリを飼ったりしながら暮らすつもりだ」と話していた。平穏で、悠々自適な生活を希望していた文氏だったが、退任後、私邸周辺では一時、保守系団体や新型コロナウイルスワクチンの被害を訴える団体などが文氏を批判する集会を開催。拡声器やスピーカーを使って批判を繰り広げ、地元住民から騒音による苦情が上がる事態にもなった。
それでも徐々に、思い描いていた平穏な暮らしが送れるようになったのか、SNSでは畑仕事をする様子や、飼い犬との暮らしなどを投稿するようになっていった。
そして、先月には私邸近くに自身がプロデュースした書店「平山書房」をオープンさせた。「平山書房」は、文氏が8億5000万ウォン(約8530万円)で購入した一戸建てをリフォームしてオープンさせた。文氏は書店オープンの狙いについて、昨年12月の韓国紙・ハンギョレ新聞などとのインタビューで「平山村は静かで美しい田舎なのに、私が私邸をここに定めたことでデモによる騒音と罵詈雑言が村を覆ってしまい、住民たちは精神的に途方もないストレスを感じている。食堂やカフェ、店をやっている方々が被害に遭うのを見て、私にお手伝いする方法はないか悩んだ末、村の本屋をやることを考えるようになった」と語っている。
先月25日には書店の看板の上掲式が開かれた。文氏は「住民たちの文化空間となり、憩いの場になることを期待する」とオープンを喜んだ。文氏は今後、この書店を本を通じた人々の交流の場としたい考えという。
今月10日に公開が始まった映画「文在寅です」は文氏の退任後の生活にスポットを当てたドキュメンタリー映画で、文氏が私邸で庭いじりをしたり、縁台に横になって昼寝をしたり、悠々自適な生活を送る様子が記録されている。公開に先立ち、先月14日には、同作品のイ・チャンジェ監督とプロデューサーのキム・ソンウ氏がユーチューブチャンネルで映画の一部を公開。インタビューに答える場面の映像で文氏はユン・ソギョル(尹錫悦)現政権の批判を繰り広げた。文氏は「5年間の成就、私の成就というより、大韓民国国民が共に成し遂げた大韓民国が成就したものなのに、それがあっという間に崩壊し、過去に逆戻りしてしまい、そのような様子を見て一方ではむなしい思いがする」と語った。
また、退任前に「普通の市民として生きる」などと語ったことの真意について説明。「ひとまず私が人としては忘れられ得ないが、現実政治の領域では『もう忘れられたい』という思いをあのように表明した」と明かした。
公開を前に先月には上映館の確保のためにクラウドファンディングが実施され、8日間で目標額の約37倍が集まり話題になっていた。
今月10日の公開初日には約1万3000人を動員し、3日目には累積動員数5万人を突破するなど、順調な滑り出しを見せたが、週明け後の15日は3522人と急減。映画館は無料チケットや割引チケットの配布を始めている。無料チケットは16日までに7500枚、70%割引チケットは3000枚が配られたという。しかし、公開6日目までに観客動員数は7万8241人にとどまっている。
この状況に、文政権で与党だった「共に民主党」系のインターネット・コミュニティサイトには「大変だ。映画の成績が良くない」「このままでは100万人どころか10~20万人で終わってしまうかも」などと懸念の声が上がっている。
文氏はかつて「忘れられた人になる」などと語り、映画からは私人としての生活を堪能している様子がうかがえるが、先月、書店をオープンした際は、一部から、書店を拠点に政治活動を再開させるのではとの憶測も広がった。文氏側は「過度な意味を込めてはいけない」としているが、書店には「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)代表ら党所属議員や党員らが既に訪れている。映画の不振を同党関係者が過度に懸念しているのは、国民の文氏への関心、影響力低下を危惧してのことなのか。
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