<W解説>「進展あった」と韓国の福島原発視察団、待たれる最終評価(画像提供:wowkorea)
<W解説>「進展あった」と韓国の福島原発視察団、待たれる最終評価(画像提供:wowkorea)
東京電力福島第1原発の処理水海洋放出をめぐり、先月下旬に日本を訪問した韓国視察団が先月31日、ソウル市内で記者会見し、視察結果について発表した。視察団の団長を務めた原子力安全委員会のユ・グクヒ委員長は「設備が計画通り設置されていることが確認でき、必要な処理水のデータも入手できた」と視察の意義を強調。一方、放出計画を総合的に評価するため、今後も追加の分析を行う考えを示した。

福島第1原発の処理水の海洋放出計画をめぐっては、日本政府が2021年4月、放出の方針を閣議決定した。韓国政府は当時「日本政府からの事前協議がなく、日本側が一方的に決定したもので遺憾だ」と批判した。また、ほとんどの韓国メディアは日本政府の方針を批判的に報道。関連する記事ではこれまで一貫して処理水を「汚染水」と表現している。漁業関連団体からも激しい反発が起きた。日本産の海産物に不安が高まり、韓国産と偽って流通させていたとして韓国の水産業者が摘発されたこともあった。昨年9月のIAEA(国際原子力機関)年次総会では韓国の代表が演説し、「原発事故で発生した汚染水が海に放出される史上初のことになる」と述べて懸念を示し、科学的に安全な方法で行うことなどを求めた。日本政府と東京電力は安全性を繰り返し強調しているが、韓国政府は処理水の海洋放出について「科学的で客観的な根拠に従い、合理的に、透明性を持って行わなければならない」としている。

また、韓国では福島第1原発事故を受け2011年9月から、福島・宮城・岩手など、8県産の水産物の輸入を禁止している。

一方、韓国海洋技術科学院と韓国原子力研究院の共同研究チームは今年2月、南部のチェジュ(済州)島で開催された韓国防災学会の学術大会で、海洋放出された処理水がどう拡散するかのシミュレーション結果を発表。海洋放出された場合も大きな影響はないとする結論を導き出した。しかし、韓国ではこの結果を持ってしても依然、懸念の声は強く、市民団体は「日本政府の主張を鵜呑みにしたものだ」と結果を疑問視した。

先月7日に開かれた日韓首脳会談で、岸田文雄首相とユン・ソギョル(尹錫悦)大統領は、韓国の専門家らによる視察団を日本に派遣し、現地を視察させることで合意した。これに基づき、韓国は原発や放射線の専門家ら計21人で構成する視察団を編成し、先月21日に訪日した。23~24日には福島第1原発を訪れ、処理水を薄める設備や海への放出に使う設備のほか、処理水に含まれる放射性物質を分析する施設などを確認した。25日には経済産業省や原子力規制委員会の担当者らと総括会合を開いた。会合は7時間以上に及び、処理水の海洋放出計画を審査する原子力規制委員会との質疑応答では、委員会が行っている検査や関連資料の共有を要請した。

視察団のユ団長は31日に記者会見し、「具体的な資料も手に入れることができ、科学技術的な検討において意味のある進展があった」と視察の意義を強調した。

一方、「より精密な判断のためには、追加の分析と確認作業が必要だ」とし、処理水放出の安全性に関する評価は避けた。追加分析を行った上で、後日、最終的な評価を公表するという。

しかし、処理水放出に反対する韓国の環境団体は「日本政府を立てるような視察だった」と批判。最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)代表は、韓国を代表する水産市場である南部・釜山のチャガルチ市場を今月3日訪れ、海洋放出に反対する集会に参加する予定。

韓国の調査会社4社が先月22~24日にかけて行った世論調査では、視察団の派遣が「役立たない」との回答が53%で、「役に立つ」の40%を上回った。

処理水の海洋放出が今夏に迫る中、最終評価の結果が待たれる。

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