レーダー照射問題は、2018年12月20日、能登半島沖で発生した。韓国海洋警察庁と韓国海軍駆逐艦が遭難した北朝鮮漁船の救助作業中、海上自衛隊の哨戒機が接近。駆逐艦から火器管制レーダーが照射されたとされる問題だ。
日本側は問題発生の翌日午後、韓国国防部に通報し、対応を求めた。通報から約3時間後、国防部は「レーダー照射の事実はなかった」とする見解を日本に伝えた。その後、国防部は会見で海自哨戒機が艦艇の真上を通過する特異な行動を取ったため、レーダーではなく光学カメラを向けたと説明した。しかし、2019年1月に韓国側が公開した映像には光学カメラが撮影した画像は含まれていなかった。それにも関わらず韓国側は「海自哨戒機が人道目的で活動中の我々の艦艇に対して威嚇飛行した」と非難した。その後、日韓防衛当局はシンガポールで実務協議を開いたが双方の主張は平行線をたどり、同月21日、防衛省がレーダー問題に関する最終見解を発表することで、日韓協議の打ち切りを発表。以後、国防当局間の交流も途絶えた。
この問題は、韓国ではムン・ジェイン(文在寅)政権時に起きたことだが、尹政権に変わってからも「レーダー照射自体行っておらず、むしろ自衛隊機が韓国軍の艦艇周辺を低空で威嚇飛行した」とする従来の立場を維持してきた。
浜田防衛相とイ国防部長官は今月4日、アジア安全保障会議(シャングリラ会合)への出席のため訪問したシンガポールで会談した。終了後、イ長官はレーダー照射問題について、「再発防止策を打ち出すことに重点を置くことにした」と記者団に明らかにした。実務協議からスタートし、解決策を探るという。国防部関係者は「哨戒機問題に関する韓日防衛当局の立場は現在も変わりがない」とし、「ひとまず双方の立場をそのままにして再発防止策を図ることで一致した」と説明した。
また、国防部は、日韓両首脳が先の首脳会談で日韓関係の一層の発展で合意したことを受け、防衛当局間でも「安全保障協力の増進に向けて緊密に意思疎通していくことで一致した」との会談結果を明らかにした。
韓国紙の朝鮮日報は、約3年ぶりに開かれた今回の日韓防衛相会談を機に、「5年近くにわたり続いた哨戒機対立が解決に向け動き出した」と伝えた。
読売新聞は、会談で日韓の防衛相がレーダー照射問題の再発防止策を含めた協議加速で一致した背景について「事実関係の追求よりも、両国の連携強化を優先したためだ。日韓関係の改善が急速に進む中、防衛当局間に残る『最後のトゲ』を取り除き、日韓、日米間の防衛協力を進める狙いがある」と解説した。
韓国紙のハンギョレ新聞は「両国が哨戒機問題の幕引きを図ることにした背景には、事実関係の確認が困難である点も働いた」とし、「真偽を確かめるためには、韓国の駆逐艦の戦闘体系情報と日本の哨戒機が探知したレーダー情報を明らかにする必要があるが、両国とも敏感な軍事情報を公開する意思はない」と解説した。
一方、産経新聞は「北朝鮮の核・ミサイルの脅威が日増しに高まる中、日韓の防衛当局が双方の隔たりを棚上げにしたまま、『再発防止』という未来に視点を置いて関係修復に乗り出すことに一致点を見いだした形だ」と指摘。その上で、「ただ、お互いへの信頼が前提の安保協力にあって問題の根源にふたをしたままでの関係改善への取り組みでは、今後ひずみを露呈する可能性も否定できない」と懸念を示した。
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