<W解説>駐韓中国大使の発言機に中韓が批判の応酬、関係悪化への懸念(画像提供:wowkorea)
<W解説>駐韓中国大使の発言機に中韓が批判の応酬、関係悪化への懸念(画像提供:wowkorea)
シン海明駐韓中国大使が、韓国のユン・ソギョル(尹錫悦)政権の外交政策を批判する発言をしたことが波紋を広げている。韓国外交部はケイ大使を呼び抗議。一方、中国外務省も駐中韓国大使を呼び抗議し、韓中外交当局の激しい言葉の応酬となっている。両国の軋轢(あつれき)が生じかねない事態に、懸念の声が上がっている。

ケイ大使は今月8日、ソウルの大使公邸で韓国最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)代表と面会し、北東アジア情勢や韓中関係について意見交換した。李氏が対中貿易赤字に対して懸念を示すと、ケイ大使は「中国も韓国の対中貿易赤字を注視している」とした上で、世界経済の状況が良くないなどの原因もあるが、韓国が脱中国を試みたことが重要な原因だとの見解を示した。ケイ大使は「韓国には中国との関係において外部の妨害から抜け出すことを願う」とし、韓米関係、日米韓3か国協力を重視する尹政権の外交政策をけん制。「一部では米国の勝ち、中国の負けに賭けている。誤った判断であり、後で必ず後悔する」と述べ、米国の圧力といった外部の干渉によって誤った判断をしないよう警告した。外国の大使が駐在国の政府を露骨に批判するのは異例。

ケイ大使は2020年に駐韓中国大使に就任した。それまでにソウルと平壌での勤務経験があり、中国外務省の代表的な朝鮮半島通として知られる。韓国語も堪能だ。1986年に中国外務省に入り、在北朝鮮大使館で1988~91年、2006~08年の2回勤務。駐韓国大使館で92~95年、03~06年、08~11年の3回にわたり計10年間勤務した後11年に本省に戻り、15年8月からモンゴル大使を務めた。20年に駐韓大使に赴任した際は、過去の韓国勤務で築いた幅広い人脈を生かして韓中関係発展に寄与することが期待された。

ケイ大使の発言を受け、韓国外交部のチャン・ホジン第1次官は9日朝、ケイ大使を外交部に呼び、強い遺憾の意を表明。「事実と食い違う内容や黙認できない表現でわが国の政策を批判した。これは(外交使節の友好関係促進業務を定めた)ウィーン条約と外交的な慣例に反するのはもちろん、韓国内の政治に介入する内政干渉になりかねない」と指摘した。さらにチャン長官は「ケイ大使による今回の言動は、相互尊重に立脚した韓中関係の重視と発展という両国政府と国民の願いに大きく反している。外交使節の本分から外れないよう身を処すべきだ、全ての結果は本人の責任になることをはっきりと警告する」とケイ大使に伝えたという。

また、外交部のパク・チン長官も9日、「外交慣例というものがあり、大使の役割は友好を促進させることであって、誤解を広めてはならない。(ケイ氏の発言は)度を越した」と強く批判した。

ケイ大使の発言は前述のように、8日に「共に民主党」の李代表と面会した際に出たものだが、今回の懇談について韓国紙の朝鮮日報は、ケイ大使は「中国の見解を積極的にPRする『対韓国民談話』の場として利用した」と指摘。「駐韓中国大使館はケイ大使の発言を報道資料として配布した。駐韓外国大使が韓国政界関係者との会合で発言した内容を報道機関に資料として提供するのは異例のことだ」と解説した。韓国の政界からも批判の声が上がっており、与党「国民の力」のキム・ギヒョン代表は党の会議で「明らかな内政干渉であり、外交的に深刻な欠礼を行ったケイ大使に強い遺憾を表明する」とした上で「ケイ大使は事前に計画したように韓国政府を批判したにも関わらず、李代表はこれに調子を合わせて自らバッグダンサーになった」と李氏に対しても非難した。

一方、この問題をめぐり、中国外務省の報道官は、中韓関係における現在の課題は「中国が引き起こしたものではない」との見解を表明。11日には、次官補がチョン・ジェホ駐中韓国大使を呼び抗議。韓中関係に関する中国の立場を説明し、「ケイ大使が韓国各界の人物と接触し交流することは業務」とし、「目的は理解を増進し、協力を促進させ、通関関係の発展を進めること」と主張。「韓国側は現在の中韓関係の問題がどこにあるかを振り返り、真摯(しんし)に向き合うことを望む」とし、「両国関係の健全かつ安定的な発展のため、積極的に努力することを望む」と述べた。

韓国紙のハンギョレ新聞は「両国外交当局が互いに抗議したことは、尹政権発足後の韓中関係をさらに悪化させる契機になる可能性が高い」と指摘した。

しかし、韓国は北朝鮮問題などで中国の協力が欠かせず、さらなる関係悪化は避けたいところだ。

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