ノージャパン運動は2019年7月、日本政府による対韓輸出管理強化に抗議する目的で始まった。日本を訪れる韓国人旅行者も大幅に減り、2019年10月は20万人余りと、コロナ禍前の当時の時点では、2011年に発生した東日本大震災の直後以来の大幅な落ち込みとなった。
不買運動も激化し、それまで人気だったアサヒやキリン、サッポロなど日本メーカーのビールも不買の対象となり、一時、コンビニなどから商品が消えた。ビールのみならず、日本車や衣類などあらゆる日本製品がターゲットとなり、韓国市場から撤退に追い込まれるブランドもあった。
しかし、一連の不買運動は当初から「選択的不買運動」とも揶揄(やゆ)された。2020年3月、任天堂のゲーム機「ニンテンドースイッチ」の人気ソフト「あつまれ どうぶつの森(あつ森)」が韓国で発売されるや、発売日前日から大勢の人が販売店に並ぶ様子が見られた。日本製であっても代替となる韓国製品が存在しなければ飛びつく状況に、ネット上では「不買運動をしていても、『あつ森』は買うんだなあ」と一貫性がない消費行動を指摘する声も上がった。
しかし、その後、新型コロナの大流行で、半ばなし崩し的に「ノージャパン運動」は下火となった。そうした中、今年5月、岸田文雄首相とユン・ソギョル(尹錫悦)大統領が会談し、両国トップによる相互訪問「シャトル外交」の再開で合意。政治のみならず、民間レベルでも交流が活発化している。先月、韓国で販売が始まったアサヒビールの「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」は品薄状態が相次ぐ大ヒットを遂げている。今月にはトヨタ自動車の韓国法人、韓国トヨタが、高級車「クラウン」のクロスオーバー(CUV)モデルを発売した。トヨタのフラッグシップモデルの上陸で、韓国内における輸入車の勢力図に変化が生じることになるのか注目されている。また、今月21日には、トヨタの高級ブランド、レクサスのトップ、レクサスインターナショナルの渡辺剛プレジデントが韓国を訪れた。渡辺氏はレクサスのEV(電気自動車)モデルである「RZ450e」の発売イベントに合わせて訪韓。「電気自動車の時代にも『レクサスは違う』という言葉を韓国から聞きたい」などと語った。トヨタグループの経営トップ級が韓国を訪れたのは2012年の豊田章男会長(当時社長)以来、11年ぶりのことだった。
アサヒビール、トヨタのいずれも、ノージャパン運動時には標的の筆頭となったが、このところの韓国市場における積極的な販促の動きからは、日韓関係の改善を受けて、ようやく攻めの姿勢に転じることが可能な環境が整ったことをうかがわせる。
関係改善に加え、日本政府によるコロナの水際対策の緩和、そしてその後の撤廃も追い風になり、訪日韓国人客数は急回復。5月の訪日外国人客数の国・地域別では韓国が最も多く51万5700人と全体の約3分の1を占めた。1~5月でも約3人に1人が韓国人観光客で、約258万3400人と最多だ。ここ最近、一気に進んだ「円安ウォン高」も大きく関係しているとみられる。今月19日、韓国の外国為替市場では一時、「100円=897ウォン」をつけた。800ウォン台をつけるのは2015年6月以来、約8年ぶりのことだった。
韓国の旅行会社ハナツアーの分析によると、韓国における今夏(7~8月)出発の海外旅行の渡航先として日本は18.2%でベトナム(19.9%)に続き2位だった。
かつての「ノージャパン」から、今や「ゴージャパン」へと様変わりしている。
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