<W解説>無意味な偽情報は韓国国民の不安をあおるだけ=原発の処理水放出に関する報道(画像提供:wowkorea)
<W解説>無意味な偽情報は韓国国民の不安をあおるだけ=原発の処理水放出に関する報道(画像提供:wowkorea)
今夏にも始まる見通しの東京電力福島第一原発の処理水海洋放出をめぐり、韓国のインターネットメディア番組が今月21日、日本政府が国際原子力機関(IAEA)に献金したと報じた。これに対し、日本の外務省は「事実無根」と完全否定している。

福島第一原発の処理水の海洋放出計画をめぐっては、日本政府が2021年4月、放出の方針を閣議決定した。韓国政府は当時「日本政府からの事前協議がなく、日本側が一方的に決定したもので遺憾だ」と批判した。

日本政府と東京電力は安全性を繰り返し強調しているが、韓国政府は処理水の海洋放出について「科学的で客観的な根拠に従い、合理的に、透明性を持って行わなければならない」としている。

先月7日に開かれた日韓首脳会談で、岸田文雄首相とユン・ソギョル(尹錫悦)大統領は、韓国の専門家らによる視察団を日本に派遣し、現地を視察させることで合意した。これに基づき、韓国は原発や放射線の専門家ら計21人で構成する視察団を編成し、先月21日に訪日。福島第一原発を訪れ、処理水を薄める設備や海への放出に使う設備のほか、処理水に含まれる放射性物質を分析する施設を確認するなどした。また、経済産業省や原子力規制委員会の担当者らと総括会合も行った。

視察団は先月31日、ソウル市内で記者会見し、視察結果について発表した。視察団の団長を務めた韓国原子力安全委員会のユ・グクヒ委員長は「設備が計画通り設置されていることが確認でき、必要な処理水のデータも入手できた」と視察の意義を強調。一方、処理水放出の安全性に関する評価は避けた。追加分析を行った上で、最終的な評価を公表するとしている。

ユン・ソギョル(尹錫悦)政権は、早ければ月内に公表される国際原子力機関(IAEA)の評価結果などを踏まえ、科学的な根拠に基づき、放出の是非について総合的に判断することにしている。

こうした中、韓国のインターネットメディアが21日、動画投稿サイト「ユーチューブ」で、日本政府がIAEA関係者に政治献金を行ったなどと報じた。出所不明の文書に基づき、日本の外務省幹部Aが、「日本政府はIAEAに100万ユーロ以上の献金を行っており、IAEAの安全性レビューは最初から安全と決まっている」と述べたなどとしている。配信した動画では、「外務省幹部Aメモ」と書かれた幹部Aと「担当浅川」とのやり取りを記したメモが登場。しかし、所々、日本語として不自然な表現がみられ、日本の官公庁や企業などの内部文書とは考えにくい。

報道に対し日本の外務省は22日、「日本がIAEAに対して政治献金を行うことはあり得ない」と否定した。松野博一官房長官も「事実無根で、無責任な偽情報の流布に強く反対する」と批判した上で、海洋放出について「高い透明性をもって、科学的根拠に基づき丁寧に説明し、国際社会の理解が深まるよう、引き続き取り組む」と強調した。

今回、政治献金の報道を行ったメディアは、これまでも報道内容をめぐって度々物議を醸している。昨年には、尹大統領が30人あまりの弁護士と高級酒場で深夜に酒席を共にしたと問題提起し、その後、同メディアに所属の記者が夜に退勤する法務部長官(法相)の公用車を度々つけ回した。自宅玄関まで押しかけ、長官の名前を連呼。その様子をユーチューブで生配信した。一連の行為を受け、検察は、記者に対し、接近禁止命令などを求める暫定措置を裁判所に求めた。

また、昨年10月に韓国・ソウルの繁華街、イテウォン(梨泰院)で起きた雑踏事故をめぐっては、別のネットメディアと共に犠牲者155人の名簿を一方的に公開。韓国記者協会災難(災害)報道準則「被害者の人権保護」第19条に抵触する疑いがあると指摘された。

現在、韓国では、最大野党「共に民主党」がIAEAの検証の信頼性に疑問を呈しており、今回のネットメディアの報道もそうした中でなされた。しかし、22日に韓国政府が開いた処理水海洋放出に関する記者会見に出席したIAEAの元幹部、ハン・ピルス氏は「これまでにさまざまなIAEA調査報告書が発行されたが、専門性と客観性が論争になったことはなかった」と述べた。共に民主党は「IAEAは日本に偏向している」と主張し、現在進行中の調査に対しても「信頼性に問題がある」と問題提起しているが、ハン氏は「IAEAは客観的かつ妥当性ある結果を出すために多くの努力を傾けている。日本側が望む論理だけが反映されることはないだろう」と反論した。その上でハン氏は「最終報告書の信頼性はIAEAの権威とも直結するため、使用する言葉一つでも間違わないために、複数の弁護士や専門家が作成に関与する」と証言した。

尹政権としては今後も丁寧な説明を続けることで偽情報を排除し、国民の不安を払拭(ふっしょく)したい考えだ。

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