＜W解説＞朝鮮戦争の開戦から73年、ますます深まる米韓と北朝鮮に溝

今月25日、朝鮮戦争（1950～53年）の開戦から73年を迎えた。韓国のユン・ソギョル（尹錫悦）政権は日米韓の安保協力の重要性を改めて強調。尹大統領は「強力な力だけが真の平和を保障する」と訴えた。一方、野党側は尹政権の外交安保政策が朝鮮半島の緊張を高めていると批判した。朝鮮戦争は今なお休戦中だが、北朝鮮はこの戦争に勝利したと主張しており、休戦協定が結ばれた7月27日を「戦勝節」に定めている。戦勝節70周年の来月27日には閲兵式（軍事パレード）を開く可能性も指摘されている。米韓と北朝鮮との溝はますます深まる一方だ。

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朝鮮戦争は朝鮮民族の分断国家として1948年に成立した韓国と北朝鮮の間で生じた、朝鮮半島の主権をめぐる国際紛争。1950年6月、北朝鮮が武力による国家の統一を目指して韓国に攻め入ったことから始まった。国際連合は、北朝鮮への制裁を決定し、米軍を主力とする国連軍を派遣。これに対し中国は、中国人民義勇軍を送って北朝鮮を支援した。一進一退の戦いは1953年に休戦協定が結ばれるまで続いた。休戦協定は、1953年7月27日に国連軍と北朝鮮人民軍、中国人民義勇軍の3者間で締結された。韓国は休戦に反対し、署名を拒否したが、この協定により北緯38度線付近に軍事境界線が設定され、境界線から南北それぞれ約2キロは非武装地帯（DMZ）とされた。

朝鮮戦争の開戦から73年を迎えた25日、韓国の尹大統領はSNSに「共産勢力の侵略と戦って自由を守り抜いた英雄の犠牲が無駄にならぬよう、韓国を強固に守り世界の自由と繁栄に寄与する」と強調した。尹大統領は朝鮮戦争で韓国軍62万人と国連軍15万人（このうち米軍13万人）が死傷したとし、「強力な力だけが真の平和を保障する」と訴えた。さらに尹大統領は「参戦勇士とその家族が流した血と涙を決して忘れてはならない」とし、「自由な韓国をつくった血のついた軍服の意味を記憶すべきだ」と投稿した。

ハン・ドクス首相は政府主催の式典に出席し「北の偽りの善意に依存する偽の平和ではなく、強力な自主国防で韓国の安全保障を守る」と誓った。ハン首相は北朝鮮が今なお当時のような妄想から抜け出せずにいると指摘。「自由民主主義など普遍的な価値を共有する国々との連帯が安保の核心になる」とし、日米韓の安保協力の重要性を改めて強調した。

一方、最大野党「共に民主党」は、朝鮮半島の平和に向けて努力するよう、尹政権に求めた。同党のパク・ソンジュン報道官は「朝鮮半島の緊張感を高めることに同調している」と尹政権の外交安保政策を批判。その上で、北朝鮮との対話をはじめとする外交努力を通じて南北関係を管理するよう求めた。同じく野党の「正義党」も「朝鮮半島の平和を守ることが国の最優先の責務」と強調した上で、「特定の国との軍事同盟による『強対強』の外交では平和を守れない」と指摘した。

一方、開戦から73年になるのに合わせ、北朝鮮の朝鮮中央通信は24日、北朝鮮外務省の米国担当局長の談話と、米国の原子力潜水艦の釜山入港を批判する国際問題評論家による論評を掲載した記事を配信した。

今月16日、米海軍の原子力潜水艦「ミシガン」が韓国南部の釜山に入港した。ミシガンの来港は2017年10月以来、約6年ぶりのことだった。ミシガンは全長約170メートル、全幅約13メートル、水中排水量約1万8000トンの世界最大級の潜水艦で、射程2500キロの巡航ミサイル「トマホーク」を約150発搭載できる。一方、北朝鮮は米軍の原子力潜水艦や空母、戦略爆撃機などの朝鮮半島付近への展開に神経をとがらせている。

朝鮮中央通信が配信した国際問題評論家による論評では「こうした動きが我々の核戦力強化を誘発する結果になると忘れてはならない」と米韓をけん制した。

同通信は25日にも開戦日に合わせた記事を配信。米国が「『第2の朝鮮戦争』を挑発するならば、米国の終末を招くだろう」と警告した。記事は「（休戦から）数十年の歳月が流れたが、米帝（米国）はまだ成し遂げられない野望を実現しようとしている」と非難した上で、米韓による合同軍事演習などの規模が毎年拡大していると指摘。「情勢は朝鮮戦争前夜をほうふつとさせる」と主張した。配信の記事は米国への敵意を前面に打ち出しており、「われわれ人民の復讐（ふくしゅう）心は歳月の流れとともに、百倍になった」とした。

北朝鮮が「戦勝節」に定める来月27日には閲兵式が開かれる可能性が指摘されている。米政府系メディアのボイス・オブ・アメリカは23日、衛星写真の分析から、首都・ピョンヤン（平壌）のキム・イルソン（金日成）広場で人の集団とみられる点がとらえられたと報じた。普段は大きな動きがない同広場で、列の形態をした黒い物体が平行に並んでいる様子が確認できたという。韓国紙の中央日報は「来月の閲兵式の開催の可能性と関連して関心が高まっている」と伝えた。