事の発端は、ケイ大使が今月8日、ソウルの大使公邸で韓国最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)代表と面会し、北東アジア情勢や韓中関係について意見交換した際での発言。ケイ大使は「韓国には中国との関係において外部の妨害から抜け出すことを願う」とし、韓米関係、日米韓3か国協力を重視する韓国のユン・ソギョル(尹錫悦)政権の外交政策をけん制。「一部では米国の勝ち、中国の負けに賭けている。誤った判断であり、後で必ず後悔する」と述べ、米国の圧力といった外部の干渉によって誤った判断をしないよう警告した。外国の大使が駐在国の政府を露骨に批判するのは異例のことだ。
ケイ大使は2020年に駐韓中国大使に就任した。それまでにソウルと平壌での勤務経験があり、中国外務省の代表的な朝鮮半島通として知られる。韓国語も堪能だ。20年に駐韓大使に赴任した際は、過去の韓国勤務で築いた幅広い人脈を生かして韓中関係発展に寄与することが期待された。
ケイ大使の発言を受け、韓国外交部のチャン・ホジン第1次官は翌日、ケイ大使を外交部(外務省に相当)に呼び、強い遺憾の意を表明。「事実と食い違う内容や黙認できない表現でわが国の政策を批判した。これは(外交使節の友好関係促進業務を定めた)ウィーン条約と外交的な慣例に反するのはもちろん、韓国内の政治に介入する内政干渉になりかねない」と指摘した。
また、外交部のパク・チン長官も「外交慣例というものがあり、大使の役割は友好を促進させることであって、誤解を広めてはならない。(ケイ氏の発言は)度を越した」と強く批判した。
韓中関係は近年冷え込んでいるが、ケイ大使の発言を受けて、韓国では反中感情が一段と高まっている。影響はすでに出始めており、韓国紙のハンギョレ新聞は「韓中関係の悪化などで中国旅行の需要が減っていることを受け、航空業界は韓中路線の一部を減らしたり、今以上に増やしたりしない傾向にある」と伝えた。
こうした中、中国共産党の機関紙、人民日報は27日、「中国は韓国との関係を重視し、発展させるという基本的立場に変わりはない」とする中国外交部の毛寧報道官の発言を見出しにした記事を掲載した。同紙が報道官の韓国についての発言を記事として掲載するのは約2か月ぶりのことだった。韓国紙の中央日報は「今回の人民日報の韓中関係重視の意思を示した報道は、韓国外交部のパク・チン(朴振)長官の発言直後に出た点で注目される」と指摘した。朴長官は25日、聯合ニューステレビの番組に出演し「尹政権は中国と対立する理由がなく、そうする考えもない。引き続き韓中友好増進に向け戦略的な意思疎通を強化する」と述べた。翌26日、中国外交部の定例会見で毛報道官は「中国は朴長官の発言を注視している」とした上で、前述の立場を示した。
朴長官の意思表明を受けた毛報道官の呼応、そしてこれに関する人民日報の報道。一連の動きから、中国側が韓中関係の修復に乗り出したのではないかとの見方も出ているが、ある北京の外交消息筋は中央日報の取材に、「まだ判断するのは早い」と慎重な見方を示した。
来月中旬にインドネシアで開かれる東南アジア諸国連合(ASEAN)の関連会合では日中韓の外相が同席する。日本としては、2019年12月を最後に途絶えている日中韓3か国の首脳による「日中韓サミット」の再開に向けた地ならしの場としたい考えだが、中韓関係の悪化が懸念材料となっている。
日韓関係が改善され、日中韓サミット再開への機運が高まってきた中で、今度は中韓関係の冷え込みで再会に暗雲が立ち込める事態となった。3か国の首脳が手を取り合い、握手を交わす日が来るのはいつになるのだろうか。
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