日韓財務対話は2006年に始まり、閣僚級が両国を行き来する形式で開催されてきたが、ソウルで2016年8月に開かれたのを最後に途絶えていた。今年に入り、日韓最大の懸案とされた元徴用工問題も解決の道筋が示されたことから、5月のアジア開発銀行(ADB)年次総会に合わせた両財務相の会談で再開に合意していた。今回、6年10か月ぶり、8回目の開催となった。
財務対話の冒頭、鈴木財務相は「域内の経済成長を支え、金融の安定を維持するため連携して機動的な政策対応を行っていくことが重要だ」と述べた。これに対し、チュ長官は「財務対話の再開が、政府間の関係の正常化が経済政策や金融協力の部分にまで広がっていることを示す成果だ」と述べた。
財務対話は約2時間近くにわたって行われ、「通貨スワップ協定」の再開で合意した。通貨スワップ協定は、金融不安などの危機が生じた国から要請があった場合、その国の通貨と引き換えに、相手国が米ドルなどの外貨を一時的に提供して支援する仕組み。2000年5月にタイ・チェンマイで開催された第2回ASEAN(東南アジア諸国連合)+3財務大臣会議で、アジアの地域内で緊急にドルを融通しあう「チェンマイ・イニシアティブ」と呼ばれる枠組みを設けることで合意。日韓の通貨スワップ協定はこの合意にもとづき、1998年のアジア通貨危機をきっかけとして2001年に始まった。2006年には日本が韓国に対し外貨準備として保有している最大で100億ドル分を、また韓国は日本に対して最大で50億ドル分を融通する仕組みが作られた。しかし、2012年に当時のイ・ミョンバク(李明博)大統領による竹島(韓国名・独島)上陸のほか、慰安婦問題などで両国の関係が悪化。これらの影響を受けて協定は段階的に規模が縮小され、2015年2月の期限満了時に協定を延長せずに打ち切りとなっていた。
協定は約8年ぶりに再開されることになった。交換枠は最大100億ドル(約1兆4400億円)。鈴木財務相は財務対話の後に記者会見を開き、協定再開で合意したことについて「アジア域内の経済を支えて金融の安定を維持するためには、セーフティーネットとして2か国間の通貨スワップは必要だとの思い、認識を共有した。それぞれの国で外貨準備高が積み上がっているので当面は発動はないと思っているが、いざという時の備えが両国の通貨の信認にとってはプラスだ」と述べた。また、韓国大統領室は、再開を「歓迎する」と表明し、「3月の韓日首脳会談以後、安全保障や産業の分野で急速に回復した両国関係が金融協力分野でも回復することを示す意味ある進展」と評価した。
ただ、スワップの経済的な必要性はかつてより薄れている。毎日新聞は「岸田文雄首相と尹錫悦大統領による首脳相互訪問『シャトル外交』が本格的に再開する中、経済分野での日韓関係改善の象徴という意味合いが大きい」と指摘した。朝日新聞も「日本政府内には、過去の日韓関係悪化などの経緯から、スワップ協定再開への慎重論もあった」とし、「それでも合意に至った背景には、双方の政治的判断が大きい」と解説した。
韓国は1997年のアジア通貨危機で深刻な打撃を受けたが、現在は外貨準備高が世界9位の4210億ドルに達しているため、韓国にとってもスワップの必要性は低下している。一方、韓国紙のハンギョレ新聞は「両国がドルベースでスワップを結べば、為替不足の非常状況で、日本が保有するドルと韓国ウォン、または韓国が保有するドルと日本円を一定比率でそれぞれ交換できるようになる」と指摘。「円スワップと比較してドルを直接受給できるため、流動性の側面ではるかに効率的な上に、日本が米国と無期限・無制限常時スワップを結んだ状態であるため、事実上『韓米通貨スワップ拡大効果』も得られるという分析が出ている」と伝えた。
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