出生届が提出されていない、いわゆる「無戸籍の子供」は、行政機関の事務をチェックする監査院が保健福祉部(部は省に相当)に対し行った定期監査の結果明らかになった。監査院は申請時のB型肝炎ワクチンの接種情報などを基に2015~22年生まれの2236人の出生届が出されていないことを確認。このうち23人に対する調査の結果、少なくとも3人が死亡し、1人は遺体の遺棄が疑われるという。
韓国では昨年末から乳幼児殺害事件が相次いで発生しており、先月ソウル近郊のキョンギド(京畿道)スウォン(水原)市のアパートで、冷蔵庫から乳児2人の遺体が見つかった事件は、前述の監査院の定期監査が発端で明るみになった。水原市の事件では、情報提供を受けて、市の担当者が乳児が住んでいるとみられる自宅を訪ねたところ、母親が調査を拒否。警察が自宅を捜索したところ、冷蔵庫から乳児2人の遺体が発見された。警察は30代の母親を殺人と死体遺棄の疑いで逮捕した。韓国メディアによると、母親は2018年に女児を、19年に男児を病院で出産。直後に殺害したと供述している。収入が少なく、経済的に厳しい中で妊娠が分かり、育てることは難しいと判断して犯行に及んだとも説明しているという。
東亜日報は「(ソウル近郊の)インチョン(仁川)と(南東部)のキョンサンナムド(慶尚南道)を含む他の地域でも、未届け出生児が生存しているかどうかを調査しており、被害事例はさらに出る可能性もある」と伝えた。
その上で同紙は「今回の乳幼児殺害及び遺棄事件は、出生届が出されないと、(乳幼児が)どれほど危険な状況に置かれることになるのかを如実に示している」と指摘。「病院を利用する際、保険の恩恵を受けられず、義務教育の対象からも除外される。家庭で放置されたまま虐待や遺棄されても、外ではわかりにくい」とし「無戸籍の赤ちゃんは、犯罪に遭って初めて世の中に姿を現す」と出生届が出されていない「無戸籍児」が2000人以上もいる状況を問題視した。
韓国政府は先月28日から始めた全数調査を今月7日までに終える計画。調査対象の子供の親が調査を拒んだり、子供の売買や遺棄が疑われたりする場合は警察に捜査を依頼する。虐待が疑われるケースについては自治体の児童保護チームに連絡する。
また、韓国国会は30日の本会議で、医療機関に申請時の出生通知を義務付ける「出生通報制」の導入に向けた法改正案を賛成多数で可決した。出席267議員のうち、賛成266、反対0、棄権1という結果だった。これについて朝鮮日報は「与野党ともに、出生通報制の導入について認識を共にしているという意味だ」と解説した。
現行法上、出生届は親が出すことになっている。出生通報制は、両親が故意に出生届を提出しない場合に備え、医療機関が健康保険審査評価院を通じて出生情報を地方自治体に通知し、自治体が出生届を出せるようにする制度。出生情報には、生まれた日付と時間、性別、実母の名前、住民登録番号などが含まれる。地方自治体は審査評価院の出生情報と子供の父母の出生届を比較・確認し、出生届を提出していない父母には7日以内に提出するよう促さなければならない。父母がこれに応じない場合、自治体の首長は職権で、日本の戸籍簿に相当する家族関係登録簿に出生を記録することになっている。朝鮮日報は「これにより、少なくとも病院で生まれた乳児は出生届の未提出による悲劇を免れることができる見通しだ」と伝えた。改正案は公布日から1年後に施行される。
一方、東亜日報は「出生通報制の法制化は第一歩に過ぎない」とし、「『生活が苦しい』という理由で子供を放置したり、捨てたりする親がいないように、制度全般を整備しなければならない」と指摘した。
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