<W解説>北朝鮮が5月に打ち上げに失敗した軍事偵察衛星、韓国軍は「軍事的な効用性なし」と結論=「欺瞞作戦」の可能性も(画像提供:wowkorea)
<W解説>北朝鮮が5月に打ち上げに失敗した軍事偵察衛星、韓国軍は「軍事的な効用性なし」と結論=「欺瞞作戦」の可能性も(画像提供:wowkorea)
韓国軍当局は、北朝鮮が今年5月31日に打ち上げに失敗した軍事偵察衛星について「偵察衛星としての軍事的な効用性は全くない」との見解を明らかにした。韓国軍は、ファンヘ(黄海)に落下した軍事偵察衛星の発射体の残骸を引き揚げ、国防科学研究所などの専門機関が詳しい分析を進めていた。

北朝鮮は、5月31日から6月11日の間に黄海、東シナ海、フィリピン北部のルソン島の東方面に「衛星ロケット」を打ち上げると5月に予告。その期間初日の早朝、北朝鮮北西部ピョンアンプクト(日平安北道)のソヘ(西海)衛星発射場から軍事偵察衛星「マンリギョン(万里鏡)1」を乗せた宇宙発射体「チョンリマ(千里馬)1」を発射した。北朝鮮の「衛星」打ち上げは2016年2月以来のことだった。しかし、北朝鮮は国営の朝鮮中央通信を通じて失敗したと発表。ロケットは1段目の分離後、2段目のエンジンに異常が発生し、推進力を失って朝鮮半島西方の黄海に墜落した。北朝鮮の国家宇宙開発局の報道官は当時、新型エンジンシステムや燃料に事故原因の可能性があるとの見方を示した。

失敗に終わったものの、日韓は対応に追われた。韓国政府は発射当日の午前、国家安全保障会議(NSC)常任委員会を開き、「国連安全保障理事会決議の重大な違反であり、朝鮮半島と国際社会の平和と安全を脅かす深刻な挑発だ」と批判した。

韓国内では、発射直後にソウル市が市民に退避の準備を促す警戒警報を発令。「6時32分にソウル地域に警戒警報発令。国民の皆さんは退避する準備をし、子供やお年寄り、体が不自由な人が優先的に退避できるようにしてください」との内容のメールが市民らのスマートフォンに送信された。早朝に警告音が鳴り響き、動揺が広がった。しかしその後、政府が「ソウル市が発令した警戒警報は誤発令だった」と訂正。韓国合同参謀本部は「北朝鮮が撃った発射体は西海上を飛行し、首都圏地域とは関係がない」と明らかにし、行政安全部(部は省に相当)も「ソウル市は警報地域に該当しておらず、市がこの日午前に出したSMS(ショートメッセージ)は誤って出された」と説明した。自治体と政府の連携の不十分さが露呈する形となった。

日本政府は一時、全国瞬時警報システム(Jアラート)を発令し、沖縄県に避難を呼びかけたが、約30分後に日本には飛来しないと発表し、避難指示を解除した。

韓国軍は打ち上げから約1時間半後、落下地点で発射体の残骸とみられる物体を見つけ回収作業に着手した。しかし、残骸は重量があり作業は難航。海軍の潜水隊員も投入されたが、円筒形の残骸は表面が滑りやすく、ワイヤーの固定が難しいため引き揚げ作業は時間を要した。水深75メートルの海底に沈んだ残骸に潜水士がワイヤーを取り付け、慎重に作業を進め、残骸発見から15日後の先月15日、ようやく引き揚げに成功した。その後、衛星も回収し、米韓の共同調査団が分析を進めてきた。

韓国軍は今月5日、分析結果を公表し、「衛星体は軍事偵察衛星としての実用性は全くない」と結論付けた。一方、韓国軍は、そう結論付けた根拠は示さなかった。韓国紙の朝鮮日報によると、偵察衛星の場合、解像度は少なくとも1メートルは必要になるが、この衛星は解像度が10~20メートルで、通常の商業衛星と比べてもその性能はかなり劣るレベルだという。また、衛星の部品にはロシアなどの海外製品が多く使われていたことも分かった。

分析の結果、北朝鮮が主張する技術水準に達していなかったことが明らかとなり、米韓などに誤った認識で脅威を与える「欺瞞(ぎまん)作戦」だった可能性も出てきた。

一方、北朝鮮は2回目の打ち上げを急ぐ方針を示している。今後、打ち上げを繰り返しながら、軍事偵察衛星の能力向上を図っていくことが予想され、韓国軍は引き続き警戒を続けている。

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