韓国の賃貸制度で家主が苦境、競売で家を失うケースが急増(画像提供:wowkorea)
韓国の賃貸制度で家主が苦境、競売で家を失うケースが急増(画像提供:wowkorea)
韓国では、高額の保証金を預ける賃貸制度「チョンセ」の相場が下落し、借家人に保証金を返せない家主が増えている。その結果、借家人が強制競売を申請し、集合住宅(マンションやヴィラなど)の所有権が変わるケースが急増しているという。特に、チョンセ価格の下落幅が大きいソウル市では、6月に強制競売で所有権を手放した家主の数が前月の2倍以上増えたことが分かった。

 韓国最高裁の登記情報サイトによると、6月に全国で強制競売で売却された集合住宅は551件で、前月の361件から36%増えた。今年初めから5か月間は300件台で推移していたが、先月は200件近く増えている。

 首都圏では、ソウル市と京畿道で強制競売による売却が目立った。ソウル市では、6月に強制競売で所有権が変わった集合住宅は121件で、前月の53件から2倍以上増えた。京畿道も148件と全国最多で、前月の83件から78%増えている。

 競売サイト「ジジオークション(GG Auction)」の李ジュヒョン先任研究員は、このような傾向について「ソウルは強制競売で売却された物件のほとんどが、多世帯や連立住宅である可能性が高い」とし、「チョンセ保証金を返してもらえなかった借家人が強制競売を申請する件数が増加している。ヴィラのチョンセ詐欺など関連の事件がまだ解決できていないものも多く、下半期に引き続き増えるものとみられる」と説明した。

 一方、仁川市では、強制競売での売却は1月から6月まで20~40件台で安定している。仁川市では今年初めにチョンセ詐欺事件が多発し、借家人の被害が大きかったため、政府が競売猶予や停止措置を取れるようにしたことが効果を発揮しているとみられる。政府は先月末、チョンセ詐欺被害者支援委員会を設置し、265件の被害事例を審議・議決した。そのうち195件は仁川市で発生したものだった。

 李先任研究員は、「ソウル・京畿と仁川は、ケースが違うと見る必要がある」とし、「仁川は根抵当権によって競売に付されたものが多く、競売猶予措置で(競売の)進行が停止された状態なので傾向を把握するのは難しい」と説明した。

 強制競売は訴訟を通じて判決文を受け取り、債権者が裁判所に直接申請する競売だ。借家人が保証金を返さない家主を対象に申請するのがこれに該当する。任意競売は金融機関などの債権者が法的手続きなしに、任意で担保物を売却する場合だ。

 チョンセ保証金を返せない家主が増えたことで、強制競売開始決定登記の申請も増えている。全国では5月(2173件)に2000件をこえた強制競売開始決定登記の申請件数が、先月2261件に増えた。ソウルは同期間、549件から580件に、京畿道は485件から555件に増加している。

 韓国政府は下半期にチョンセ保証金返済困難者が増えるという懸念から、賃貸市場のリスク管理を強化する方針だ。今月末から1年間、チョンセ保証金返済用融資に対する規制を緩和する。規制緩和の対象者は、これまでの総負債元利金償還比率(DSR)40%の代わりに、総負債償還比率(DTI)60%が適用される。
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