「世界スカウトジャンボリー」は4年に1度開かれるイベントで2日に開幕式が行われた。今回は日本を含む150か国以上から約4万3000人が参加している。韓国での開催は1991年以来、2回目。開幕式には韓国スカウト連盟名誉総裁のユン・ソギョル(尹錫悦)大統領も出席。尹大統領は小学生時代、スカウト隊員として4年間活動した経験があり「幼いころのスカウトの経験は人生の大きな力になった」とし、隊員たちを激励した。
参加者はセマングムの自然の中で多様なプログラムを体験しながら交流する。また文化体育観光部(部は省に相当)は、参加者に韓国文化を体験してもらおうと、会期中、韓国館を運営。聯合ニュースによると、韓国語教育機関「セジョン(世宗)学堂」を運営する世宗学堂財団の体験館では、モバイルアプリや仮想現実(VR)機器などを通じて韓国語と韓国文化関連コンテンツに接することができる。
しかし、2日夜の開幕式では100人以上がめまいなどの熱中症の症状を訴えた。猛暑が続く韓国では、今年、これまでに熱中症で死亡する人が相次いでいる。2日は夜になっても気温が下がらず、開会式でも27度を記録していたという。現場は干拓地で、日陰となる場所が少ないことも影響したとみられる。
尹大統領は4日、休憩用の冷房付きバスや、冷水を提供できるトラックを供与し、食事の量や質も改善するよう緊急の指示を出した。また、参加者の安全確保と円滑な運営のため、韓国政府は69億ウォン(約7億600万円)の支援を決めた。
しかし、運営に批判が高まっており、最大野党「共に民主党」のパク・グァンオン院内代表は4日、政府に対して「ジャンボリー大会の期間を縮小するか、中断するか、緊急に検討して対応してほしい」と求めた。さらにパク代表は「6年間の準備と莫大な予算、そして国家の体面など苦しい部分があるかもしれないが、青少年の健康を最優先に判断すべきだ」と主張した。
韓国紙の中央日報は4日付の社説で「参加者からは『お祭りではなく生存ゲーム』との声も出ている。組織委は『どの国のジャンボリーでもあり得る状況』と釈明したが、安易な判断だ」と批判した。
参加した各国からも懸念の声が上がり、約4500人が参加した英国のほか、米国、シンガポールの代表団が安全面への懸念から既に現地から撤収することを決めた。
準備不足を指摘する声も出ている。朝鮮日報は「セマングムは農業用地として造成された場所のため水が溜まりやすく、日光を避けられる天然の空間がない。韓国政府は日よけ用のタープテントや水道施設を用意したが、現地のスカウト隊員たちは『全く足りていない』という反応だ」と伝えている。
一方、会場がある全羅北道は「準備に万全を期した」と主張している。キム・グァンヨン知事は2日、ラジオ番組で「海風も吹くので猛暑をしのげるし、ツタのトンネルやミスト噴射施設も数多く設けた」と話した。
中央日報は前出の4日付の社説で「今回の行事が韓国をPRする機会になるか、国際的な恥になるかは、残りの期間に政府と組織委がどれだけ対処できるかにかかっている」とした。
スカウトジャンボリーは12日まで開催予定で、批判が高まる中、スカウト機構と韓国の組織委員会は安全策を講じた上で同地で続行する意向を示していた。しかし、台風6号の接近に伴い、スカウトらは会場内のキャンプ地を離れ、ソウルなど首都圏に移動することになった。韓国政府も7日、現地からの早期撤収を宣言した。約1000台のバスが投じられ、参加者は本日8日午前から順次、現地を出発する予定だ。
猛暑に台風と、今回のスカウトジャンボリーは気象に振り回される事態となっている。
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