在韓米軍の兵士、トラビス・キング2等兵(23)は先月18日、JSAで見学ツアーに参加中に無許可で軍事境界線を越え、北朝鮮に越境した。外国人が北朝鮮に無許可で越境するのは異例。目的はわかっていないが、キング2等兵は韓国で暴行容疑で約2か月間拘置施設に収容され、米国に送還される際に空港から抜け出してJSAに向かったと伝えられている。キング2等兵は越境前にJSAで見学ツアーに参加していたが、JSAの見学は事前の申し込みが必要なため、あらかじめ北朝鮮に渡る準備をしていた可能性があるとみられている。
キング2等兵の越境を受け、米国は事態の解決に向け国連軍司令部などを通じて北朝鮮側と連絡を試みた。国連軍司令部と北朝鮮軍は通称「ピンクフォン」と呼ばれる直通電話でつながっている。国連軍司令部と北朝鮮軍との直通電話は、北朝鮮が朝鮮戦争休戦協定の無効を宣言していた2013年以降、途絶えていたが、2018年7月、南北と米朝の緊張が緩和したことを受け、5年ぶりに再開された。電話機がピンク色をしていることから、「ピンクフォン」と呼ばれており、2020年2月、国連軍司令部はフェイスブックで「ピンクフォン」の写真を公開した。
北朝鮮は2020年6月、南北当局間の通信連絡線や南北軍部間の通信連絡線、南北通信テスト用の連絡線、それに北朝鮮の朝鮮労働党中央委員会本部庁舎と韓国大統領府間の直通通信連絡線(ホットライン)を完全に遮断すると宣言。しかし、こうした状況下でも国連軍司令部との「ピンクフォン」は維持された。
しかし、今回、北朝鮮側との意思疎通は難航し、キング2等兵の安否すら確認できない状況が続いていた。
こうした中、北朝鮮の朝鮮中央通信は16日、キング2等兵について初めて言及。「米軍内での非人間的な虐待や人種差別に反感を抱き、朝鮮民主主義人民共和国に行く決心をしたと自白した」と伝えた。また、「不平等な米国社会に幻滅を感じ、わが国か第三国に亡命する意思を表明した」と伝えた。
同通信によると、キング2等兵は越境後、勤務中の朝鮮人民軍の兵士から取り調べを受け、不法侵入の事実を認めたという。
同通信の報道を受け、米国防総省の報道担当者は15日、キング2等兵が亡命の意思を示したとされることについて「本当かどうか確認できない」とした上で「われわれの優先事項は兵士を帰国させることであり、あらゆる連絡ルートを通じて働きかけている」と話した。
一方、ロイター通信によると、キング2等兵のおじは今月、米メディアの取材にキング2等兵は軍内で人種差別を受けていたと明らかにしたという。
米国は北朝鮮の国内外での人権侵害をかねてから懸念しており、米政府は国連安全保障理事会で北朝鮮の人権問題を議題とした公開会合を本日17日に開催するよう要請している。
そんな中、真偽は不明なものの、キング2等兵が越境理由について米国内の人権問題が背景にあると主張しているほか、軍内で人種差別を受けていたというおじの証言もあり、これらが真実であれば、北朝鮮にとっては自国の人権状況が劣悪だとの米国の非難に反論する材料を得たことになる。こうしたことから、米国は今後、キング2等兵をめぐる事態の解決に苦慮することも予想される。聯合ニュースは「朝鮮中央通信はキング2等兵に対する調査は今後も続くとしており、すぐには解放されないとみられる」と伝えた。
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