福島第一原発の処理水の海洋放出計画をめぐっては、日本政府が2021年4月、放出の方針を閣議決定した。韓国政府は当時「日本側が一方的に決定したもので遺憾だ」と批判した。
韓国野党の反発や、韓国国民の不安が高まり、韓国メディアは今もなお処理水について「汚染水」と表現している。5月に開かれた日韓首脳会談で、岸田首相とユン・ソギョル(尹錫悦)大統領は、韓国の専門家らによる視察団を日本に派遣し、現地を視察させることで合意した。これに基づき、韓国は原発や放射線の専門家ら計21人で構成する視察団を編成し、5月に来日。福島第一原発を訪れ、処理水を薄める設備や海への放出に使う設備のほか、処理水に含まれる放射性物質を分析する施設を確認するなどした。また、経済産業省や原子力規制委員会の担当者らとの会合も行った。
先月4日、国際原子力機関(IAEA)は放出計画に関する包括報告書を公表。「放出に対する日本の取り組みは国際的な安全基準に合致している」と結論づけた。直後に韓国政府も独自の検証結果を公表し、放出計画は「IAEAなどの国際基準に合致することを確認した」とし、一定の理解を示した。
先月12日(現地時間)にリトアニアで開かれた日韓首脳会談で、岸田首相は尹大統領に対し、放出計画について改めて説明。安全性に万全を期し、健康や環境に悪影響を与えることはないと伝えた。また、仮に処理水の放射性物質の濃度が基準値を超えた場合は放出を中断する方針を説明した。尹大統領は先に出されたIAEAの報告書を尊重する韓国政府の立場を伝えた。
今月18日午後(現地時間)、岸田首相と尹大統領は米ワシントン近郊の大統領山荘キャンプデービッドで再び会談したが、放出については議題にならなかった。尹大統領は会談後の記者会見で、IAEAの包括報告書で示された検証結果を「信頼している」と述べた。一方、「計画通りに処理されるかどうか、国際社会での責任ある点検が必要だ」と指摘した。
これに、最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)代表は、「海洋放出を阻止する最後の機会だったにも関わらず、尹大統領はむしろ日本の肩を持った」と批判した。
「共に民主党」など韓国野党は、処理水の放出をこれまで一貫して反対してきた。同党はIAEAが「放出に対する日本の取り組みは国際的な安全基準に合致している」と結論づけた包括報告書をも「中立性を欠き、日本に偏向した検証だ」と批判。先月には同党所属の一部議員らが首相官邸前で抗議集会を行ったりもした。
放出に対する韓国国民の懸念も根強く、今月18日には市民団体が放出に反対する市民からの約187万人の署名を大統領室に提出した。
日本政府が22日、放出を24日にも開始すると決定したことを受け、韓国紙府は22日、「日本側の放出計画に科学・技術的な問題はないと判断した」とし、容認する立場を改めて示した。一方で、韓国政府が放出を支持するということではないとして「少しでも計画と異なるやり方で放出が行われれば、韓国国民の安全と健康を脅かすものと判断し、日本側に放出の即刻中断を要請する」と強調した。
一方、野党「共に民主党」は、緊急議員総会を開き、李代表は「結局、日本が最悪の環境破壊を選んだ。科学的検証も周辺国の理解も日本国民の同意も得ず、汚染水を人類公共の海に捨てる悪行を犯した」と強く批判した。また、尹大統領に対しても「日本の非道な決定に寄り添い、盾となった」などと非難した。
また、ソウルの日本大使館前や大統領室のあるソウルのヨンサン(龍山)では、市民団体が抗議活動を行った。
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