今回の首脳会談は、バイデン大統領が日韓首脳を招待することで実現した。バイデン大統領はオバマ政権の副大統領時代から日米韓3か国の協力の推進を訴え、歴史問題を背景に冷え込む日韓関係の改善を促してきた。日韓最大の懸案だった元徴用工訴訟問題は、今年3月、韓国政府が解決策を発表。これを機に日韓両国は関係改善に大きく動くこととなった。こうした動きが、独立した形では初となる日米韓3か国首脳会談の実現につながったといえる。
会談が行われたキャンプデービッドは米大統領の保養地で、ワシントンから北北西に約100キロメートルのキャトクティン山岳公園の中にある。大統領の保養地としてだけでなく、訪米した外国の要人をもてなすためにも使用され、これまで、重要な会談や会議の会場となってきた。キャンプデービッドに外国の首脳が訪れるのはオバマ元大統領時代の2015年以来で、バイデン大統領就任後では初めてのことだった。
会談では、北朝鮮や中国の動向を踏まえ、日米韓3か国の安全保障協力を新たな高みに引き上げることで一致。日米韓の中長期的な協力の指針「キャンプデービッド原則」と、具体的な協力の枠組みを示した共同声明「キャンプデービッドの精神」を発表した。声明では、具体的に▽北朝鮮によるミサイルの情報の即時共有を年内に開始▽安全保障上の脅威が生じた場合は迅速に協議―など、主に安全保障面での協力強化を打ち出している。
会談後3首脳は共同記者会見に臨んだ。バイデン大統領は「日本、韓国、米国間のパートナーシップの新時代だ」とした上で、「韓国と日本は有能で、必須的な同盟」と述べた。また、岸田首相は「歴史に新たな1ページを刻むことを大変光栄に思っている。本日ここに、我々3人は日米韓パートナーシップの新時代を開いていく決意を示す」と宣言した。尹大統領は「きょう、3首脳は新時代に向けた3か国の協力の意志と可能性を確認した」とし、「自由、人権、法治という中核的な価値を基盤とする韓米日の強力な連帯は、より平和な、反映する世界をつくるためのしっかりした土台になる」と強調した。
今回の首脳会談を受けて韓国の最大野党「共に民主党」は批判の声を上げている。同党のクォン・チルスン首席広報は19日の会見で、3か国の首脳が「有事の際の3か国協議義務化公約」を採択したことについて、「事実上の『準軍事同盟』であり、日本を含む3か国による安全保障共同体をつくるものだ」とし、「堅固な韓米同盟があるのに日本との軍事同盟がなぜ必要なのか」と述べた。その上で「日本を引き込み、『安全保障共同体』をつくらなければならないほど朝鮮半島の危機が緊迫しているならば、事前に国民に詳しく説明し、同意を得るのが先ではないのか」と批判した。また、クォン氏は「むしろ安全保障共同体への参加で国民の負担が増し、日本での危機発生時に韓国の軍事力を動員しなければならなくなるなど、韓国軍の戦略的自律性が損なわれるのではないかと懸念される」とも語った。
また、現政権に批判的な韓国紙、ハンギョレ新聞は「今年70周年を迎えた韓米同盟とは異なり、同盟関係ではない韓国と日本が、事実上の同盟国として軍事協力を強化しなければならない理由を韓国政府が全く説明していない」と指摘した。
こうした批判に対し、大統領室のチョ・テヨン国家安保室長は、聯合ニュースTVのインタビューに「国民に対する説得と誠意ある努力を続けていく」と語った。
一方、産経新聞はオピニオン記事の「主張」で、「日米間の安保協力強化は、共同の抑止力を高め、地域の平和と安定の確保に資する。3か国首脳の合意を評価したい」とした。記事は、北朝鮮が弾道ミサイルの発射を繰り返していることを念頭に「日米韓が共同演習で抑止力を強め、情報共有で対処力を高めることは理にかなっている」と主張した。一方、記事は2018年の韓国海軍駆逐艦による海上自衛隊哨戒機への火器管制レーダー照射問題が解決していないことを指摘した上で、「自浄作用の働かない韓国の政府と軍は信頼しきれない」と懸念を示し、「キャンプデービッド合意に沿って韓国が動けば朝鮮半島にとどまらずインド太平洋地域や世界でも存在感が高まろう。国際政治の主なアクターとして登場できるかもしれない。それには、レーダー照射などの反日政策の清算が求められる」と主張した。
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