先月4日、国際原子力機関(IAEA)は放出計画に関する包括報告書を公表。「放出に対する日本の取り組みは国際的な安全基準に合致している」と結論づけた。韓国政府も独自の検証結果を公表し、放出計画は「IAEAなどの国際基準に合致することを確認した」とし、一定の理解を示した。
先月12日(現地時間)にリトアニアで開かれた日韓首脳会談で、岸田文雄首相はユン・ソギョル(尹錫悦)大統領に対し、放出計画について改めて説明。安全性に万全を期し、健康や環境に悪影響を与えることはないと伝えた。また、仮に処理水の放射性物質の濃度が基準値を超えた場合は放出を中断する方針を説明した。尹大統領は先に出されたIAEAの報告書を尊重する韓国政府の立場を伝えた。
一方、「共に民主党」など韓国野党は、処理水の放出をこれまで一貫して反対してきた。同党はIAEAが「放出に対する日本の取り組みは国際的な安全基準に合致している」と結論づけた包括報告書をも「中立性を欠き、日本に偏向した検証だ」と批判。先月には同党所属の一部議員らが首相官邸前で抗議集会を行った。
日本国内においても、国民の不安が完全には払しょくしきれていない中、24日から放出が始まった。
韓国国務調整室のパク・グヨン第1次長は25日の定例記者会見で、韓国政府は放出を容認したことに「政府の立場は汚染(処理)水の海洋放出への『賛成』ではなく、国際的な基準や科学的な事実に基づかない放出には反対ということ」と説明した。
韓国国内では混乱が広がっており、24日には大学生がソウルの日本大使館に侵入しようとし、16人が警察に身柄を拘束された。学生らは拘束の直前、大使館前で放出の反対デモを開いていた。けが人は確認されていない。
韓国紙のハンギョレ新聞は24日、ソウルにあるノリャンジン水産市場を取材。「水産業界の憂鬱な雰囲気を代弁するかのような静けさだった」と伝えた。市場内で30年間商売をしてきた店主の一人は同紙の取材に、処理水の問題の関心が高まるようになってからの売り上げ減少は「30年の商売歴の中で初めて」と話した。この店主は訪れた客に対し、販売している水産物が「韓国産」であることを強調。同紙は「呼びかけもむなしく1~2人の客が店の周りをうろつくだけだった」と伝えた。聯合ニュースは「福島原発の汚染(処理)放出が今後、韓国の漁業生産にどう影響を及ぼすか注目される」と報じた。
学校現場からも不安の声が出始めているといい、教育部(部は省に相当)は25日、「学校の給食には安全性が確認された水産物が供給されている」と説明した。韓国紙の中央日報は「教育部によると、2021年3月~2023年5月に小・中・高校・特殊学校1万1843校を調べた結果、日本産水産物を使用した事例はなかった」とも伝えている。
韓国国民の不安の高まりを受け、ハン・ドクス首相は24日、談話を発表。「汚染(処理)水を放出しないのが一番良いだろうが、今の状況で国民の皆さんが過度に心配する必要はないというのが世界中の専門家の共通した意見だ」と述べた。その上で、「IAEAや国際原子力学会、そして韓国の専門家は日本政府が発表した措置に基づいて放出すれば、韓国が大きく心配する理由はないとみている。政府を信じ、科学を信じることを願いたい」と呼び掛けた。
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