秋夕はソルラル(旧正月)と並ぶ韓国の代表的な名節で、親戚一同が故郷に集まって先祖の墓参りをしたり、食事をしたりするのが一般的な過ごし方だ。「民族大移動」と言われる大規模な帰省ラッシュで高速道路の大渋滞や、人でごった返すソウル駅の光景はコロナ禍前まではお決まりだった。しかし、コロナ流行後は状況が一変。帰省を自粛する人も多く、墓の草刈り代行サービスや、オンライン墓参りなども登場した。
しかし、今年はコロナ禍前の秋夕の光景が戻るものとみられている。旅行需要も高まっており、韓国の大手旅行会社、ハナツアーでは、秋夕の連休を含む9月27日から10月6日までに出発する海外旅行の予約者の目的地は、日本が23%で最も多く、ベトナム19.4%、欧州13.8%、中国10.4%、タイ7.3%、台湾5.9%の順となっている。欧州など、長距離旅行の商品の予約が活発なことが今年の特徴で、欧州の中でもスペイン、イタリア、英国、スイスへの旅行希望者が多いという。同社では、夏休みシーズンのピークの7月末~8月初めの欧州旅行の予約率は9.3%にとどまったが、前述のように、秋夕の連休を含めた9月27日から10月6日までの期間中の予約率は、現時点(今月25日)で4ポイント以上となっている。同社の関係者は、韓国メディア(アジア経済)の取材に「(夏休みシーズンを避け)秋夕を前後して遅い休暇を取れば比較的長く休暇日数を確保できる。祝日を挟むため、家族や友人と休暇日程を合わせやすく、長距離旅行の需要も高まったとみられる」と話した。
一方、秋夕の朝には、先祖の霊を迎え入れるための祭礼「チャレ(茶礼)」が行われ、祭壇には野菜のナムルや肉、魚などたくさんの食べ物が供えられる。この準備には相当な労力が必要になり、秋夕が終わると脊椎や関節に異常を感じたり、めまいや頭痛、腹痛、動悸(どうき)などの症状を訴えたりする人が増えるとされる。「名節症候群」と呼ばれ、特に女性に多く見られる症状という。また、名節の準備は女性に集中しがちで、何もしない夫に妻が愛想を尽かし、関係が急速に悪化したあげく、離婚に至るケースもあるという。
就職情報サイトのジョブコリアが2019年に会社員の男女1921人を対象調査したところ、名節の料理や祭祀の膳の準備などで、その後うつ症状が現れたと答えた人は、10人中4人に上った。
コロナ禍では、こうした秋夕の伝統的な過ごし方が簡略化されることも多く、一部では「負担が減って安堵した」との声も聞かれた。しかし、今年は親戚ら一同が集まる秋夕の伝統的な光景も復活しそうだ。
今年の秋夕は9月29日(金)で、秋夕の前後の日は祝日となる上、今年は10月1日が日曜日なことから現時点で4連休となる。また10月3日は建国記念日「開天節」で祝日なことから、10月2日が休みになれば6連休が成立することになる。
韓国メディアによると、政府は与党「国民の力」からの提案を受け、10月2日を臨時公休日とする案を検討しているという。臨時公休日は国務会議と大統領の裁可を経て指定される。報道によると、ユン・ソギョル(尹錫悦)大統領は、臨時公休日に指定することによる経済効果などの報告を、大統領経済首席秘書官室、政務首席室などから既に受け、前向きに検討するよう指示したという。今後、党と政府が最終決定すれば、尹大統領が主宰する閣議に議題として上程され、審議・議決される見通し。仮に指定されれば、尹政権では初となる。ムン・ジェイン(文在寅)前政権では、2017年10月2日を臨時公休日に指定し、計10連休となったことがある。
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