<W解説>北朝鮮が国境封鎖を緩和、自国民の帰国が始まったことに伴い高まる懸念
<W解説>北朝鮮が国境封鎖を緩和、自国民の帰国が始まったことに伴い高まる懸念
新型コロナウイルスの流行を受け、長らく国境を事実上閉鎖してきた北朝鮮が、国外に滞在していた国民の帰国を認めた。朝鮮中央通信が今月27日に伝えた。これを受け、中国などから北朝鮮への帰国ラッシュが始まっているが、韓国政府は、中国国内の脱北者が北朝鮮に強制送還される可能性を懸念している。

北朝鮮は新型コロナの世界的大流行を受けて2020年1月末に早々と国境を封鎖。ウイルスや感染者の流入を徹底的に阻止しようとした。世界各国に感染が広がる中、真偽は不明なものの北朝鮮は長らく国内に感染者は一人もいないと主張し続けた。しかし、昨年5月、感染者の確認を初めて発表した。北朝鮮の国営、朝鮮中央通信は当時、「2020年2月から2年3か月間にわたって強固に守ってきた非常防疫戦線に穴が開く国家最重大の非常事件が起きた」と報道。それまで、「感染者ゼロ」を主張し続けてきただけに、この報道は世界に衝撃を与えた。

昨年1月、北朝鮮は国境封鎖措置を一旦は解除したものの、前述のように感染者が初めて確認されたことを受けて再び封鎖。物流が滞り、頼みの綱である備蓄米も一気に減る事態となった。これにより、住民たちは飢えに苦しみ餓死者が相次いでいるとも伝えられた。

昨年8月、北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)総書記はコロナの防疫対策をめぐって「勝利」を宣言。全国非常防疫総括会議での演説で「流入した新型コロナウイルスを撲滅し、人民の生命健康を守るための最大非常防疫戦において勝利を手にしたと宣布する」などと述べた。マスク着用義務などの各種規制も解除された。

この宣言を受け、日常を取り戻すかと思われたが、早くも1か月後にはマスクの着用についてインフルエンザなど感染症予防のためとして再び公共の場での着用を命じた。今年1月には「ゼロコロナ」政策が終わって感染者が激増した中国からの流入を恐れ、国境地帯で警戒態勢を強化した。

その後、日本や韓国など周辺各国が日常を取り戻すための政策を一層進めるようになると、北朝鮮もこの路線に合わせるかのような動きを見せるようになった。6月には北東部のハムギョンプクト・ムサンと中国の吉林省南坪をつなぐ税関が再開し、トラックによる貨物輸送が始まったと、複数の韓国メディアが報じた。また、同月には、国内においてスポーツ行事が活発に行われていることも伝えられた。

その後も北朝鮮は、朝鮮戦争の休戦協定の締結日(7月27日)の記念式典にロシアと中国の代表団を招くなど、さまざまな場面で緩和の動きを見せた。

さらに、北朝鮮国営の高麗航空は今月22日からピョンヤン(平壌)と北京の間で運航を再開した。北京首都国際空港にある高麗航空のカウンターは、帰国を希望する北朝鮮住民の列ができているという。また、25日には平壌を出発した高麗航空の旅客機が、ロシアのウラジオストクに到着した。北朝鮮が中国とロシアへの航空便の運航を再開したことから、北朝鮮の国境開放が近いとみられていた。

そして、朝鮮中央通信は27日、北朝鮮の感染対策を担う国家非常防疫司令部が「防疫等級を調整することにした国家非常防疫司令部の決定により、海外に滞在していたわが公民(北朝鮮国籍者)たちの帰国が承認された」と報じた。約3年7か月ぶりに公式に封鎖措置を緩和した形だ。帰国した人は1週間、施設で隔離されるという。

一方、北朝鮮の緩和措置に、韓国統一部(部は省に相当)のク・ピョンサム報道官は28日、中国に滞在する脱北者の強制送還の可能性に懸念を表明。「中国国内の脱北者が本人の意思に反して強制送還されることなく、意思が尊重されなければならない点を改めて強調する」と述べた。

また、外交部(外務省に相当)のパク・チン長官は25日、韓国内の北朝鮮人権団体の代表らと面会。韓国の聯合ニュースによると、パク長官は脱北者が意思に反して強制送還されてはならないとの政府の立場を関係国との協議で伝えていると説明。韓国行きを希望する脱北者については全員受け入れるとの原則の下、外交努力を傾けていると強調したという。

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