「もう『ノージャパン(NO JAPAN、日本製品の不買運動)』と言っていたのは過去のことのようです。」

25日に福島原発の処理水放出が始まってから5日が過ぎたが、韓国では2019年にホワイトリストから除外された時のような「ノージャパン」旋風は沸き起こっていない。特に新型コロナウィルスの感染拡大のために控えられた海外旅行の需要が現在日本に集中しているのはもちろん、日本製品を消費する人々の口からも「個人の選択が優先されるべき」との声が多く聞かれた。専門家たちはノージャパン運動当時の経験をもとに、各自の消費と価値観などが尊重されているためだと分析している。

30日に訪れたインチョン(仁川)空港の第1ターミナルには、平日の午前中にもかかわらず、旅行客の姿が多く見られた。東京や福岡はもちろん、熊本や高松など日本に向かう飛行機が1時間に5便に達するほどで、出国のために手続きを踏む旅行客が長蛇の列をなしていた。

25日から福島第一原発からの処理水の海洋放出が始まり、日本に対する否定的な認識が増したが、「ノージャパン運動」よりは「選択の自由」を選んだ人々が日本旅行へと向かっているのだ。この日から3泊4日の日程で福岡旅行に行くという会社員のチュさん(32)は「全く躊躇(ちゅうちょ)がなかったわけではないが、とても久しぶりの旅行で、周りも旅行を引き止めるムードが特になかったから、行くことにした」と語り、「どうせすでに(処理水の)海洋への放出が始まっているのなら、韓国でも日本でも影響を避けられないのは同じだと思う」と話した。沖縄に向かう50代のイさんは「(ノージャパン運動よりも)今週末に雨が降り、台風も来るとのニュースもあるので心配している」と語り、「わざわざ夏休みシーズンとチュソク(秋夕/旧盆)シーズンの間の人が少ない時期に行くことにしたにもかかわらず、レンタカーの予約などが難しかった」と話した。

海外旅行に行く韓国人の間での日本の人気は、統計からも証明されている。日本政府観光局(JNTO)によると、今年1月から7月までに来日した外国人観光客は1303万2900人だった。このうち韓国人の観光客は375万5300人で、3人に1人の割合になり、国籍別では第1位だった。特に7月は初めて韓国人観光客が60万人を突破した。5月に日韓首脳会談が行われてから処理水の海洋放出の議論が始まったにもかかわらず、着実に観光客が増えた。

実際に、日本は最近韓国で最も注目されている旅行地だ。1時間から2時間程度の短い飛行時間で、100円当たり900ウォン台前半に止まる歴史的な円安により、旅行費用も安くつくためだ。先週日本旅行に行ってきたという会社員のAさん(30)は「大阪に行ってきたが、どの食堂に入っても韓国語が聞こえるほどだった」と話し、「チェジュド(済州島)などの国内の観光地よりも費用が安く、『海外へ行きたい』という理由も大きいように思う」と語った。

旅行需要のおかげで航空便も活発に行き来している。仁川空港公社によると、この1ヵ月間の日本を往来する航空便は6845便に達し、国際線の中で最も多く運行された。これは中国(5380便)や米国(3196便)はもちろん、タイやベトナム、フィリピンなど夏休みの旅行地として人気の高い東南アジア地域の航空便を上回った数値だ。千葉県から来た寺田さん(43)は「2011年の東日本大震災の当時は深刻だと感じたが、最近では往来することに特に問題はないように感じる」と話した。

2019年当時に日本製のビールやユニクロなど「不買運動」の対象になった商品や業界でも、大きな変化は感じられないといったムードだ。関税庁によると、2019年の日本製ビールの輸入量は4万7331トンで、前の年の半分水準に減少していたが、先月はビールの輸入量全体の27.1%のシェアを記録し1位に浮上した。「アサヒスーパードライ」の缶ビールや、ウイスキーと炭酸水を混ぜて作った「ハイボール」などの人気も依然として高い。ソウル市ソンパ(松坡)区のユニクロ販売店でも秋物の洋服を準備するスタッフたちが目についた。

専門家たちは2019年の「ノージャパン運動」当時、他人の消費に口出しされたり、咎(とが)められたりしたことから「学習」した効果があったと分析している。イナ(仁荷)大学消費者学科のイ・ウンヒ教授は「2019年当時、政治・外交問題と消費を結びつけることが果たして正しいのかという疑問が提起されたことをもとに、個人の消費や価値観にともなう選択を尊重する必要性について学習した」と述べ、「処理水の海洋放出が始まっても、個人が重視する価値を優先して選択するようになっている」と説明している。
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