関東大震災は1923年9月1日午前11時58分に発生。首都圏などが、現在の震度7や6強に相当する激しい揺れに襲われた。東京や神奈川を中心に11万棟近くの住宅が全壊した。また発生時間が昼時と重なったことから、同時多発的に火災が発生したことも被害をさらに拡大させた。火災で焼失した建物は21万2000棟を上回り、このうち住宅は44万7000戸に上る。死者・行方不明者は10万5000人を超え、明治以降の日本では最大の災害となった。
地震そのものの被害だけでなく、「災害時のデマ」も問題になった。地震の混乱の中で、「朝鮮人が暴動を起こした」、「井戸に毒を入れた」などとデマが飛び交い、軍や警察のほか、民間人で組織された自警団らが日本で生活していた朝鮮人や中国人を殺害する事件が起きた。「朝鮮人虐殺」と呼ばれるこの事件の正確な犠牲者数は不明だが、内閣府中央防災会議の報告書は、震災で亡くなった約10万5000人の「1~数%」と推定している。また、この虐殺をめぐって、事実そのものを疑問視したり否定したりする言説も広がっており、歴史の風化や歪曲が懸念されている。
2021年6月に89歳で死去した歴史学者のカン・ドクサン(姜徳相)氏は長年、震災当時の朝鮮人虐殺について研究を続けた。朝鮮人虐殺についてカン氏は「日本の民衆が流言飛語に乗せられて朝鮮人を虐殺したというのは誤りで、軍隊と警察が率先して朝鮮人虐殺を実行し、朝鮮人暴動のデマを流して民衆を興奮させ、虐殺を扇動した」と主張。「国家権力を主犯に民衆を従犯にした民族的大犯罪、大虐殺」と結論付けた。また、カン氏は2020年9月、著書「関東大震災」を復刊した際、中日新聞の取材に「『朝鮮人なら殺してもいい』という時代があった事実を認め、繰り返さないための教訓としてほしい」と語っている。
日本の新聞労連は先月31日、関東大震災から100年となるのを前に声明を発表。朝鮮人虐殺に触れ「新聞報道がデマを拡散し、排外主義をあおった事実を忘れてはならない。今こそ差別をなくし、市民の命を守るという報道の使命を胸に刻む決意を新たにする」と記した。
東京弁護士会も同日、国と東京都に人種差別を根絶するための施策の実施を求める会長声明を公表した。「100年を経た現在もなお、日本社会に差別意識は根深く、在日コリアン等へのヘイトスピーチ、ヘイトクライムが後を絶たない」と指摘。「人種差別を撤廃する法整備を行うべき」と求めた。
災害デマも近年はSNSで拡散しており、2021年2月13日に福島県沖を震源とする最大震度6強の地震が発生した際には、ツイッター(現・X)などで「朝鮮人あるいは黒人が井戸に毒を入れた」とする投稿があった。
2016年4月に発生した熊本地震の際も、ネット上に「熊本の朝鮮人が井戸に毒を投げ込んだ」などと悪質な投稿が確認された。
関東大震災の混乱下で起きた朝鮮人虐殺の反省や教訓が生かされておらず、日本政府も史実に向き合おうとする姿勢を見せない。韓国政府は、日本政府に対し、真相究明のための調査の必要性を訴えているが、松野官房長官は先月30日の記者会見で、事実関係を政府として調査する考えはあるかと記者から問われ、否定的な認識を示した。
これに対し、韓国外交部(外務省に相当)のイム・スソク報道官は31日の定例会見で「韓国政府はこれまでさまざまな機会に日本に対して過去を直視するよう促してきた」とし、韓国政府として必要な措置を引き続き検討していく考えを示した。
韓国紙のハンギョレ新聞は30日付の社説で「両国政府が共同で朝鮮人虐殺を調査すれば、韓日和解の意味ある一歩となるだろう」と提案した。
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