「共に民主党」など韓国野党は、処理水の放出をこれまで一貫して反対している。同党はIAEA(国際原子力機関)が「放出に対する日本の取り組みは国際的な安全基準に合致している」と結論づけた包括報告書をも「中立性を欠き、日本に偏向した検証だ」と批判。7月には同党所属の一部議員らが訪日し、首相官邸前で抗議集会を行った。
先月、日本政府は海洋放出を決定するや、李代表は放出を「テロ」行為と批判。「日本は放射能汚染(処理)水の放出によって、韓国と環太平洋諸国に取り返しのつかない災難をもたらそうとしている」と主張した。また、批判の矛先をユン・ソギョル(尹錫悦)政権にも向け、科学的、技術的問題はないとする尹政権の責任を追及する考えを示した。
先月24日から放出が始まり、かねてからこれを容認する立場を示していた韓国政府は、同日、ハン・ドクス首相が談話を発表。「汚染(処理)水を放出しないのが一番良いだろうが、今の状況で国民の皆さんが過度に心配する必要はないというのが世界中の専門家の共通した意見だ」と述べた。その上で、国民に対し「IAEAや国際原子力学会、そして韓国の専門家は日本政府が発表した措置に基づいて放出すれば、韓国が大きく心配する理由はないとみている。政府を信じ、科学を信じることを願いたい」と呼び掛けた。
韓国の世論調査会社、韓国ギャラップが先月29~31日に韓国全土の18歳以上の1002人を対象に実施した世論調査では、処理水の海洋放出について回答者の75%が「心配だ」と回答。また、「水産物を食べることに抵抗がある」との回答は60%に上った。
韓国政府は国民の不安払しょくに努めており、大統領室の食堂では風評被害対策として韓国産のヒラメやクロソイの刺身や焼きサバなどの提供が始まった。先月28日には尹大統領が海鮮を中心にした昼食を交えてハン首相と会合した。韓国では福島など8県産の水産物の輸入を禁じているが、韓国産の水産物にも風評被害が及んでいる。
野党「共に民主党」は放出を非難するデモを展開。李代表は31日、「民主主義の破壊を阻止する最後の手段として、今日から無期限の断食を開始する」と宣言した。この日午後には、野党議員らと国会前で座り込みの抗議活動を行った。また李代表は、尹政権と海洋放出とを結び付け「国民の安全や財産を脅かし、海洋主権を侵害する日本の核廃水投棄テロに抵抗するどころか共犯になった」と政権を非難した。
政治家による断食は、韓国でどのような意味合いを持つのか。韓国紙の朝鮮日報は、「韓国の政界では非常に象徴的な意味合いを持つ」とし、「かつての権威主義政権に対抗する断食は政府に行動を見直させ、民主化へと向かう道を切り開いた。故キム・ヨンサム(金泳三)元大統領は1983年5月に当時のチョン・ドゥファン(全斗煥)政権に抗議し、民主化を要求する23日間の断食で勢力を結集した。これは断食闘争の代表的な事例とされている」と解説した。
しかし、李代表の断食について、与党「国民の力」からは冷ややかな声が上がっている。「国民の力」のキム・ギヒョン代表は「巨大野党を率いながら職場放棄しているのと変わらない。国民が野党第一党に望むことは断食ではなく、きちんとした政治だ」と批判。韓国では1日から通常国会が開会しており、キム代表は「山積した懸案と法案、そして予算審議が控えているというのに、野党第一党の代表が無責任な行動を取っており、国民は悲嘆に暮れている」と非難した。
前出の世論調査で、「共に民主党」の支持率は27%で、尹政権発足後、最低だった。韓国内で処理水放出への不安が高まる中でも、「共に民主党」のこの問題への対応は国民からそれほど評価されていないことがうかがえる。今重要なのは、国会において建設的な論戦を交わすことなのではないだろうか。
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